第24話ダンジョン開口

この頃都に流行るもの白磁の壺に方解石の魔法灯に窯業セラミックスの鏃。

はい。マ中将が愛してやまない、いいものの壺の再現に成功しました。


焼成しなくても窯業セラミックスが出来るのだ磁器や陶器も当然造れたのだが、それなりの気品を出すには試行錯誤があった。


いや苦労したね。陶芸製作というスキルが習得できるぐらいは作ったよ。

で、土地取得に骨を折ってくれた宗倉しゅうそう殿と許可してくれた王様に出来の良いマさまの壺を献上したのだ。

磁器も陶器も割れやすいという理由でこの世界ではイマイチ流行っていないけど…

指で弾けば涼やかな音が鳴るこの壺を国主の劉美さまが気に入ったらしく、貴族な皆様が出所を探しているようだ。

試作品のいくつかを宗倉しゅうそう殿に渡して色々根回しをして貰っている。


つぎに商業ギルドを通じて販売している方解石の魔法灯。

不純物が多く透明度の低いガラスでも見た目の綺麗さで貴重品になっているぐらいなので大商家の応接室の内装品として引っ張りだこ。

貴族を相手の商売には手を付けていない。どうしてもという貴族は宗倉しゅうそう殿を通して貰う事にした。


そして冒険者ギルドを通じて販売している窯業セラミックスの鏃は、鉄の鏃なみの貫通力がありながら軽くて価格が半分ということもあり弓士を中心に使用者が広がっている。

防具に関しては問い合わせもない。こっちは長期戦だな。


「ユウさん。署名をお願いします」


王都に出荷される商品を運ぶ為に派遣された輸送隊の責任者である蜥蜴人リザードマンが書類を持ってやってくる。

確か宗倉しゅうそう殿の家敷で警備している隊の小隊長のうちの一人だ。


「秀さん。すみませんね。こんなことにまでお手を煩わせて」


「いえ、殿からもそれなりのボーナスも頂いておりますのでお気になさらず」


宗倉しゅうそうさまへの荷箱は、いつものように紅い字で」


「了解しまし・・・」


秀の言葉が、店の外で起きた爆音に遮られる。


「何事だ」


秀が慌てて店の外に飛び出す。

続いて俺も外に飛び出す。


「地面から見たことのない魔物が」


戦士らしい冒険者が地面の一点を指さす。

見たことのない魔物って・・・そうか、情報通りか。蟻型のモンスターは居なかったんだよな。


「わたしの故郷にいたタートルアントって蟻に似てる・・・」


ラージアント(シールド)って名称を付けたけど、モデルはタートルアントという釘の頭みたいに平な頭部をもつ蟻だ。

体長が2メートルぐらいあるけど、ラージアント(ソルジャー)が蛹から出てきてすぐに蛹化したんだよな。


「蟻?というか、まさかダンジョンが生まれたのか?」


「え、ダンジョンですって?」


秀の指摘を他の人にも聞こえるようにワザとらしく叫ぶ。

ワザとらしく聞こえてなければいいが。

僅かに時間をおいて輸送隊の護衛に来ていた冒険者たちも集まってくる。


「王都に知らせに走れ。ダンジョンが生まれたかもしない。大暴走に備えろと」


秀の叫びに即座にすべての冒険者が回れ右をして走り出す。

この場合、留まって撃退を選択するのは冒険者としては失格だ。

情報を持ち帰って生かす方が価値がある。

大暴走なんてさせるつもりは無いんだけどね。


「ユウさんどうしましょう?」


「秀さんも逃げてください何とかします」


ニコリと笑って俺は棍を構える。

と言ってもマッチポンプ。適当に戦ってラージアントたちにはダンジョンに戻ってもらう予定だ。


ガキン


鈍い金属音が鳴り響く。

戦士の一人がラージアント(シールド)に殴りかかるがラージアント(シールド)は頭の平らな所で受け止める。

ギチギチ。ギギギギ。ギチギチ。ギチギチ。ギギギギ。ギチギチ。ギチギチ。ギギギギ。ギチギチ。

ラージアント(シールド)が大顎を鳴らし始める。

やがて這い出てきた穴が広がりクワガタような大顎を持つラージアント(ソルジャー)が2匹現れる。


「下がれ、いや、建物内に逃げろ」


俺の警告にその場に残った、3人の、すべて宗倉しゅうそう殿の兵が建物に向かって走る。

俺は懐から玉を取り出し地面に投げる。

ぼんという音と煙が立ち上がる。煙幕玉という逃走用アイテムだ。

しばらく建物の外でギチギチという音が響いていたが、やがて静かになる。


翌朝、王都で結成された討伐隊の第一陣が到着。

辺りが捜索されラージアントがいないことが確認され、ラージアント(シールド)が出てきた穴には結界が張られることになった。

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