第20話巨大大熊猫討伐

があぁあ


2頭目の灰色岩熊グレイロックベアが地面に倒れる。

こちらはギルド所属の冒険者による連携攻撃の成果だ。

もっとも俺が的確に巨大大熊猫パンダの回復スキルや灰色岩熊グレイロックベアの攻撃を邪魔した結果なんだけどね。


お陰でギルド所属の冒険者の見る目が少しずつ鋭くなっている。

俺がソロなのを知って戦闘後に勧誘する気満々の目だ。誘われる気はないが。


「ファイアボール」


数人の魔法使いが攻撃するが巨大大熊猫パンダは手を払うだけで魔法を霧散させる。

水、風、土、そして光の矢が巨大大熊猫パンダに殺到するが、やはり手を払うだけで魔法を霧散させる。

弓矢は到達する前に失速し、前衛の攻撃は咬みつき、払い除け、突進で阻止。

戦いは長期戦の様相を見せていた。


「ユウさん何とかならない?」


「何とかはなるけど何とかしたらヤバくない?」


「いまさらですね」


断言された。

大規模討伐依頼グランドクエスト級のモンスター1頭をさほど苦も無く討ち取ったのだから確かに今更か。

さてどうすれば楽に仕留められるか。

足元の土を握り込み、岩石生成を発動させる。


『岩石生成のレベルが10(Max)になりました』

『新たに宝石生成レベル1を習得しました』


おお、ついに来たよ宝石生成ってレベル1だと滑石か。

滑石は爪程度でも削れる柔らかい石で、判子や裁縫の時に布に目印を付けるチャコ。チョークとしても使える鉱物だ。

化粧や漢方の材料にもなったはず。

岩石生成で生成する場合は材料が要るのだが。


「宝石生成」


岩石生成で手のひらにあった石礫が白石に変わる。爪で引っかくと削れた。流石は上位スキル。


「ユウさん。戦闘中に意識飛ばしたら死ぬよ」


僧侶のウインが肘鉄を入れてくる。あー不味い不味いパンと頬を叩き気合を入れなおす。

改めて岩石生成で石礫を創り出す。

巨大大熊猫パンダとの間合いを詰め有効射程内から指弾で石礫を放つ。

そしてエアの魔法で押し出すことで石礫を加速。


ばしゅ


巨大大熊猫パンダの前腕から血飛沫が上がる。

よし。魔法は無効化されるが物理的に加速すれば問題ない。


「え、ダメージが通った」


「マイ。弓矢を加速させる魔法は」


追ってきたエルフの女弓士に尋ねる。


「かけてるわよ常識でしょ」


おう。危ないあやうくドヤ顔で無知を曝すところだった。


「いまの攻撃、石礫をエアの魔法で後押ししてるんだけど弓矢を加速させる魔法との相違はなんだろう」


「面白いことしてるね」


魔法使いのオーエスが話に割って入る。


「なるほど。弓矢にかける風の加護の魔法は命中するまで弓矢にかかってるから抵抗されるんだ」


つまり巨大大熊猫パンダは当たった魔法を無効化しているのではなく魔法を無効化する空間を纏って戦っているのか。

あとから判ったことだが、魔法使いのエアと弓士の風の加護は同じものらしい。

職固定スキル扱いらしくなの風の加護の魔法で魔法レベルが上がるわけではないらしい。


「魔法無効化は空間魔法の可能性。魔法使いは数の攻撃に切り替えろ。弓士は魔法の補助を切れ」


叫びながら巨大大熊猫パンダの前まで進む。

口だけでは動かないだろから指弾でバンバン攻撃しながらだ。

巨大大熊猫パンダ恨みヘイトを一身に受けているハズだがが、攻撃が集中することはない。


「アンカーヘイト」


どうやら適時、前衛の戦士の何人かがスキルで巨大大熊猫パンダ恨みヘイトを分散して吸い取っているようだ。ありがたい。

弓士たちも間合いを詰め矢を射掛ける。

やがて霧散していた魔法も巨大大熊猫パンダの身体に命中するようになる。


「エアカッター」


俺の放った魔法が巨大大熊猫パンダを切り裂く。


「魔法障壁が切れた。いまだ」


言った意味を正しく理解したらしく中、大規模魔法が巨大大熊猫パンダを直撃する。


がおおおおおん


悲鳴を上げ巨大大熊猫パンダが地面に倒れた。

大規模討伐依頼グランドクエスト完遂である。

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