第19話ひとつ!

俺たちの前に現れたのは目撃されたであろう体長7メートル級の灰色岩熊グレイロックベアが二頭。

灰色の毛並みに岩のようなゴツゴツとした体形・・・

というより黎明期の少ない数のポリゴンで作った四角の集合体に灰色の毛のテクスチャーを貼ったような体形だ。


そして体長10メートル級の巨大大熊猫パンダが一頭。

こちらはふつうにパンダである通常の4倍以上あるけどな。

そうそうパンダというとテレビなどでのイメージから竹だけを食べるイメージがあって草食動物と思われがちだけど、実は何でも食べる雑食。というか消化器官や歯の構造を見ればどうみても肉食動物だ。

白と黒のツートンカラーで顔にあるタレ目な柄に誤魔化されているが、よく見れば目は怖い。所詮熊は熊である。

「閃光魔法を2発。色違いで打ち上げて、異常事態が起きていることを知らせて」


「判った」


俺の声に応えてオーエスが空に向かって閃光魔法を2発打ち上げる。

色は赤と青。

ここを目指してきてる後続に対する再度の目印と何かしらに異常が起きていることに気付いてくれればいいが。

さて、被害が出る前に各個撃破といきますか。


「攻撃どのくらい凌げます?」


臨時にパーティに入ってくれた二人。

戦斧と円盾をもつ身長は120ぐらいガッシリした体形。

赤毛の短髪に灰色の瞳、マトンチョップスという立派なもみあげのドワーフ戦士のアイ・アンアイ嬢。

スパイクのついた方形の小盾を両手に装備して盾で攻守を行う盾戦士という風変わりな職。

2メートル近い長身の細マッチョで灰色の毛並みに狼頭の狼人ワーウルフのイヌボトケに声を掛ける。


「引き延ばせて10分」


「ですね」


イヌボトケの答えにアイも応じる。

10分ならなんとかなるか。


「ユニークスキルで片方のクマに罠を仕掛ける。合図するまで凌いで」


パンと地面に手を置き岩石生成を発動させる。

体長7メートルなら穴の深さは4メートルもあればいいだろ。

地面の下に縦横深さ4メートルの空洞を掘る。

天井部分いわゆる落し穴の蓋は人間の体重では割れないぐらいの厚さにして、穴の底には天に向けて棘を生やす。

棘というよりは銛だな。きちんと棘には返しを付けて。

イメージ、イメージ、イメージ!


があぁぁ


灰色岩熊グレイロックベアが右腕を振り下ろし、イヌボトケがそれを右の盾で受け流す。

ざっと灰色岩熊グレイロックベアの左に回り込み左手の盾のスパイクを灰色岩熊グレイロックベアの右腕に叩き込む。

続いて灰色岩熊グレイロックベアの右腕の傷のところにアイが戦斧、マイが弓矢、オーエスがファイアの魔法を叩き込む。

まずは戦闘力を確実に削りとる作戦。

がぁ

巨大大熊猫パンダが叫んで・・・なんだ?ボール?を召喚しているだと。

ゴロンと地面に転がり、巨大大熊猫パンダは召喚したボールで遊び始める。

ああ、何故だろう可愛い仕草に癒される。


「なんだと」


イヌボトケが何かに気付いて叫ぶ。

なんと灰色岩熊グレイロックベアの右の傷が消えかかっている・・・って巨大大熊猫パンダのヤツ嫌なスキル持ってるな!


ががう。巨大大熊猫パンダが腕を振ると黒い光がイヌボトケとアイを包みイヌボトケとアイが膝を付く。


「ぐわっ身体が動き辛いだと」


イヌボトケの悲痛な叫び声。ステータスダウンか?モンスターのくせに白系と黒系の魔法の両刀使いか?


「ウイン。白黒の攻撃は呪詛カースだ。彼らに祝福ブレスを。イヌボトケ、アイ。仕込みは終わったこっちに向かって走れ」


やってて良かった事前のステータス情報の交換会。

しかしなんでリーダーっぽい事やってるんだろうね俺は。


「彼の者たちに祝福ブレスを!」


ウインが僧侶系が使えるステータス上昇系の呪文を唱えると、イヌボトケとアイを包む黒い光が霧散する。

イヌボトケとアイが立ち上がってこちらに向かって走り出す。


「ショット」


足元の土を握り込み、岩石生成で石の塊にして灰色岩熊グレイロックベアに向かって投げつける。

続けて石の塊目掛けて礫を指弾で放つ。


ガシュ。石の塊が灰色岩熊グレイロックベアの顔面で爆ぜる。

これは攻撃じゃない。目潰し。


があぁ。灰色岩熊グレイロックベアが顔を背け攻撃が一瞬止まる。

イヌボトケとアイが俺の横を駆け抜ける。


ドスドス。凄まじい勢いで灰色岩熊グレイロックベアが走ってくる。


風刃エアカッター!」


灰色岩熊グレイロックベアの鼻の頭をめがけて風魔法を放つ。

前足を突き出して止まろうとする灰色岩熊グレイロックベア

ばきばきばき。俺の鼻先まで迫っていた灰色岩熊グレイロックベアの前足の下が崩れた。


があぁああああああああああああああああああ


つんのめるように灰色岩熊グレイロックベアの上半身が地面の中に沈み込み絶叫が響き渡る。


「落し穴、いつの間に」


イヌボトケが穴を覗き込むので俺とアイも一緒に覗き込む。

灰色岩熊グレイロックベアは頭部を石の棘に貫かれ絶命していた。

まずは一頭。

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