第16話ダンジョンのあれこれ

「解体されたモンスターの死骸や生活ゴミを引き取る事業をしたい」


商業ギルドの根古ニャーさんが俺の副業案を聞いて口をあんぐりと開ける。

そのまま呆れられていてもアレなのでアイテムボックスからあるものが入った袋を取り出す。


「私がテイムしたスライムです」


素手でスライムを掴んで出したのを見て根古ニャーさんがけたたましい悲鳴を上げた。


「なんだなんだ?」


悲鳴を聞きつけたギルド職員が集まってくる。


「スライム、だよな。何で喰われてないんだ」


「テイムしたらしい」


「え、スライムってテイムできるの?」


俺の掌でプルプルと震えるスライムを見ながらギルド職員が囁く。

食べたりしないよ?俺の配下のモンスターだし。

後から聞いた話だけど、この世界では知性がない生物はテイムできないというのが常識らしい。

はは、常識を一つ変えてやったぜ・・・


恐る恐る根古ニャーさんが帰って来たので説明を進める。


とりあえず冒険者ギルドの解体場に深さ二〇メートルほどの穴を掘る。

底に五メートル四方の玄室を造りこのスライムを放り込む。

地上に蓋を閉めると底が開く仕組みのゴミ箱を設置してゴミを捨てる。

ゴミ箱自体は定期的に生活魔法で掃除する。

スライムが玄室一杯になったら俺がスライムを入れ替える。ね、簡単でしょ。


「ゴミ箱は生きたモノが入れば蓋が閉まらないようにすれば安全性が上がりますね」


「食堂や宿屋からでる残飯処理にも使えるかもしれない」


話を聞いていたギルド職員がアイディアを出していく。


「ゴミ箱は建物の外には出せないな。犯罪者に悪用される」


「完全犯罪だもんな」


鍛冶師組合ユニオンの金属系ガラクタも禁止な」


あ、それはチョット欲しいかな。


ギルド職員にはそれなりに好感触であるが、真の目的を聞いたら絶句するだろう。

いまダンジョンの末端をラージアントに命令してここまで伸ばしている最中だったりする。

スライム部屋はダミーだ。真の目的はダンジョンの餌の確保である。


その前にここでこの世界でのダンジョンについて少し説明したい。

まず廃墟や洞窟に高レベルのモンスターが住み着き、そのモンスターの発する魔素からモンスターが発生するダンジョンマスター型。

モンスターがあらゆる経路で体内に魔素を取り込むというのは既に説明したけど、体外に排出されることもある。

このとき排出される魔素は取り込んだモンスターの属性を帯びることになる。

例えば炎龍。火の属性を持つモンスターだが、体内に取り入れきれなかった魔素を体外に放出するとき魔素に火属性を付けて放出する。

食べたら必要のないモノは出すというよりは、酸素を肺に取り入れて二酸化炭素を吐き出すのを想像して貰えればいいか。

なので、こういうダンジョンの魔素溜まりにはダンジョンマスターと同属性、同族の下位種や眷属といわれるモンスターに偏ることが多い。

例でぃうならレッドドラゴンだったりサラマンダーだったりが多く発生する。

なのでドロップするアイテムや素材は低い階層であっても比較的品質が高く当たりが多くなる。

また、ダンジョンを拡張するときにダンジョンマスターの知識が影響するため通路に一定の法則が見られるのも特徴のひとつだ。

ダンジョンマスターが討たれると、ダンジョンはそのまま枯れる可能性が高い。

いまのところ俺のダンジョンはこのパターンだ。


次に魔素溜まりから稀に生まれる魔法生物「ダンジョンコア」が生まれ、体内に魔素やモンスターや冒険者などを取り込んで、成長レベルアップしていくダンジョンコア型。

ダンジョンコアが外殻を纏えば塔型のダンジョンになり、地下に潜れば洞窟型のダンジョンになるのが特徴だ。

ダンジョンコア型はダンジョンコアのレベルで魔素溜まりから生まれるモンスターが変わるので階層ごとにモンスターに多種多様性がみられる。

ドロップするアイテムや素材は発生するモンスターに依存するので当たり外れが多い。

拡張=成長なので迷路に法則があまり見られないのも特徴のひとつ。

ダンジョンコアが破壊されるとダンジョンは廃墟や単なる洞窟になるが、ダンジョンコア自体は魔素溜まりから再生し、ほぼ一か月から数年で復活するのも特徴である。 


で、三つ目がダンジョンコアが破壊された廃墟や洞窟にダンジョンマスターが住み着き、ダンジョンマスターのもつ濃い魔素で短期間でダンジョンコアが復活。共生するハイブリッド型。

ダンジョンマスターとダンジョンコアが意識を同調させるためか、ドロップするアイテムも発生するモンスターも多種多様で質のバランスも良くなる。

上位吸血鬼やエルダーリッチなど人としての知識をもつモンスターがダンジョンマスターになって最終的にこのハイブリット型に至ることが多い。

ダンジョンモノお約束の凶悪な罠や昇降機、転移装置といった便利な装置を生み出し設置することが出来るのもこのタイプだ。

俺のダンジョンも早々にこのタイプに進化させたい。


そうそう。廃墟や洞窟がダンジョンマスターやダンジョンコアの吐き出す魔素に染まるとダンジョンになる。

ダンジョンになると、ダンジョンの地面に放置された死んだ生物や物品が吸収されるという現象が起きるようになる。

吸収されるのに時間差があるためか、ダンジョン内のモンスターは、倒されるとの同時に死体が消え、素材や魔石、アイテムがドロップされるという現象が起きるようだ。

そしてダンジョン以外で発生したモンスターは死体が残り人の手で解体しないと素材やアイテムが手に入らないのである。

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