第7話さて地盤を固めて遠出の準備をしますか

今日は朝から気配を殺し、池に水を飲みに来る動物を待つ。出来て1日も経っていないのにすでに足跡らしきものがあったのできっと来る。

2時間、3時間、4時間。半日が無情にも暮れていく。

暇なので壁を上に伸ばしつつ石で補強して・・・見た目がトーチカになっている。


ピン


『職-鉱夫Lv.1を修得しました』


なんだそりゃ・・・

ピン


『気配遮断Lv.5を修得しました』


がさっ


スキルレベル5の取得と同時に草を踏む音が響く。

スキルレベルが一定の水準に達した途端これか。いや、これがスキルか。


現れたのは体長2メートル近い大猪ラージボア

石を指に載せて親指で弾く。狙うは大猪の眉間。


びしっ、どす


鈍い音が響き大猪ラージボアが吹っ飛ぶ。


『指弾のレベルが上がりました』


『職-狩人Lv.1を修得しました』


『総合レベルが上がりました』


俺のレベルが低いからサクサク上がるな。


蔦を縒って作った縄で大猪ラージボアの両足を縛り木に逆さに吊るして動脈をショートソードで切断し血抜きをする。

そうして再びトーチカに潜り込む。

大猪ラージボアには血抜きのついでに肉食獣をおびき寄せる囮になって貰う。


ぎゃうん


大猪ラージボアの血の匂いに誘い出された体長2メートルの灰色犬グレイドックが指弾で足を撃ち抜かれ悲鳴を上げて地面に突っ伏す。

倒れた灰色犬グレイドックの脳天めがけて石棒を突き出す。


『総合レベルが上がりました』


指弾で獲物の機動力を奪い、石棒で止めをさすことで棒術のレベルが効率よく上がる。

レベルが上がると動画の達人解説が理屈ではなく感じることができるのが面白い。

アイテムボックスを開き灰色犬グレイドックを投げ込む。


中には12頭の灰色犬グレイドックが入っている。

今日はここまでにしておくか。


血溜まりのある地面に向かって岩石生成を発動させて攪拌。血抜きが終わった大猪ラージボアをアイテムボックスに投げ込む。

縦穴を降りて魔法陣のある部屋に入る。


『マスター』


魔法陣のうえに鎮座しているラージアント(クイーン)が思念を送ってくる。

見ると魔法陣のうえに何個かの卵があり、更には幼虫らしきものまでいる。早いな。


俺はアイテムボックスから灰色犬グレイドックを取り出してクイーンの前に置くと、クイーンは即座に食べ始める。

実は生体濃縮でも魔素溜まりと同じことが発生するらしい。

食物連鎖の頂点である大型肉食獣は言うに及ばず、草食系の動物や植物も魔物に変異するのだ。


「さて…」


アイテムボックスから大猪ラージボアを取り出し石包丁で革剥ぎと解体を始める。

動物の解説付き解体動画はメールでリクエストするまでもなくアップしてある。

皮をなめして革にする動画もあったが、肝心のなめし液がないのでこびりついた肉や脂を削ぐだけにする。

現地の服を手に入れるまで隠してくれればいいと妥協することにする。


そして・・・

マタギだマタギがいる。

装備した防具とコートを見ながら思わず苦笑いする。

この一週間のあいだ俺は岩石生成を駆使して剣道の胴や前垂れ、具足に籠手を模したものを作っていた。

これに灰色犬グレイドックの皮を張って、正面から見れば見た目はなんちゃって革鎧なっている。

なんちゃってというのは、大猪ラージボアの毛皮コートで隠れるから鎧の後ろを作らなかったからだ。


あと嬉しい誤算というか、ラージアントの幼虫が皮から革にする作業をやってくれたのが大きい。

厳密にいうと、幼虫が皮に付いた肉や脂を食べて、その時に染み込んだ唾液が皮のコラーゲン繊維を変性、鞣したのだ。

お蔭で岩石生成はLv.7に、ついでに防具製作Lv.1というスキルと防具職人Lv.1という職を手に入れた。


ちなみに岩石生成Lv.7は半径20メートル以内の岩や砂に影響を与え、20平方メートルの岩を破砕、生成することが出来る。

石の造詣も若手の造形作家ぐらいのクオリティーはいっている。

少なくとも、試しに造ってみたダビデ像のスマホ画像は地球の人間には好評だった。本当だよ。


『マスター。6階までの建造完了しました』


一体のラージアント(ワーカー)が頭を下げる。このワーカーは最初に生まれたワーカーだ。

滋養が良かったせいか他の6体のワーカーより少し大きい。


「引き続きダンジョンの造成は任せた」


『了』


さて遠出しますか。

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