第5話そんな情報要りません

慎重に地面から顔を出し、周りが雪に覆われた森林だと気づいた俺はのっそりと地面の穴から這い出す。


「少しも寒くはないわ…」


どこかで聞いたようなセリフをつぶやきながら一歩踏み出すが…


「ってさむうううううううう」


半端のない寒風に晒され、慌てて穴の側まで戻る。すると寒さは完全にシャットアウトされる。

これは一種の結界だな…

取りあえず穴が隠れるぐらいの大きさの石の蓋を作るとそそくさと穴の中へと戻る。

いま着ているのは転移前に着ていた仕立て屋の作ったスーツである。

これで雪降る地上を散策するのは自殺行為だ。

最低限の防寒具を材料レベルから調達する必要があり、そのためには何らかの攻撃手段が必要ということになる。

手持ちの武器はショートソードだが、これを使うのは躊躇われる。折れたら終わりだ。


ではどうするか…棒にするか。

岩石生成で長さ1メートルほどの石の棒を創りだす。

棒術は杖術・槍術・剣術・薙刀術などの操法と共通項があることが多く、また柔術の流派の多くで併伝している例が多くみられる武術だ。

まあ、テレビの西遊記で活躍していた孫悟空の影響で初歩を齧ったというのも多少ある。


「スキル初級講座」に反復行動にて学習が可能とあるし、後に杖術・槍術・剣術・薙刀術に発展するならそれはそれでアリである。

棒術の動画をサーバーに上げてもらうようメールすることも忘れない。

直接ネットに繋げればいいのだが、サーバはデーター流出対策のため完全独立しているのだから仕方ない。


つぎに飛び道具は…魔法。いや、物理的な攻撃も習得すべきだ。

魔法が使えません効きませんで詰むのはよくある話だからな。

なら、あれだろ。


ばしっ


パチンコ玉ぐらいの大きさの石の塊を創りだし、石の塊を壁に向かって指の力で弾いて打ち込む。

弾くのと同時に石の塊を空気の塊で押し出すということも並行して行う。

ゆくゆくは指向性散弾モドキとして使うつもりだ。

壁を1メートルほどえぐり魔力を半分消耗するころには風属性のエアという魔法と指弾というスキルを習得する。

スキルを習得するまでは大変だったが習得してからはレベルはサクサク上がるのはあり難い。

ついでに指と腕を鍛えるつもりで縦穴の突起でボルダリングを行い、ロッククライミングというスキルを習得。

ロッククライミングは城壁を伝っての城への侵入や山岳地帯の踏破に使えそうスキルなので並行して鍛えることにする。


MPが半分を切ったので鍛錬を止め指弾で出来た穴を拡張して2つ目の部屋を作る。

ダンジョンマスターを任されたらかにはダンジョンを作らないとね。

初期目標はマスターである俺の部屋を最下層の六階とし不可侵。

二メートル×二メートルを1マスとした10×10マスを1層とする地下五階の初心者向けのダンジョン。

ん?これは初心者がどういうものかリサーチしないとダメだな。

というかモンスターはどうすればいいんだ?


『お答えします』


疑問に対しいきなり頭の中で声が響く。

うお


『女神リーブラさまよりより良いダンジョン運営をするために派遣されました』


ohなんか来ましたよ物知りな相棒。ダンジョンオンリーっぽいけど。


「質問。魔素と魔物の産出ってどうするの」

『ではご説明いたします』


まず魔素だが、かなり希釈されたものが俺を煙突にして地球からこの世界に噴き出していくそうだ。

その魔素が吹き溜まる場所に魔素核が形成されやがて魔物が生まれるらしい。

で、この『魔素が吹き溜まる場所に魔素核が形成される』というプロセスが俺の体内でも定期的に起きるらしい。


『ユウさまの場合、魔素核が生まれるのは胃袋と子宮。排出されるの「言わせないよ」』


どうしよう物凄い下ネタ挟んで来た。

というか中身オッサンにやらせる事案か?


『女性の場合、心を壊すか過剰な母性で暴走されることが多いのです』


へーそうなんだ…ってダンジョンマスターって前任者が何人かいて少なからず心を病む任務なのか?

というかなんで女性?


『ユウさまは呼吸も食べる必要もない身体ですが、呼吸をしない食べられないない身体ではありません』


ああなるほどね。あそこ以外に溜まる分は生命活動として排出しちゃうわけか。


『赤ん坊サイズだと龍やら魔神クラスが来るのでなるべくお控えください』


いやいや鼻からスイカ級の痛みとかノーサンキューです。というか大きさ調節できるんだ。


『大きさによっては性的な快楽も得られるらしいですよ』


そんな情報要りません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る