第2話 切っ掛けは地震

日本の某県にある私立万梨阿学園の文芸部、4代前の部長がラノベ作家としてデビューした年。

その部長が3台のパソコンとWebサーバーを母校の文芸部に寄付をした。

寄付の条件として元部長は自身が連載しているラノベ世界の設定をWebサイトに一から構築することだった。

1年後、元部長のラノベは元漫研部員をパートナーとして漫画化。

漫研にもパソコンが提供されバーチャル世界はどんどん強化されていく。

これに電子研…旧PCゲーム研の有志が参加して、元部長のラノベ世界は文芸部のサーバーで簡単なVR世界として展開されていった。

噂によればこのデータを元にゲームメーカーの大手バンザイから1年後にバーチャルMMOとしてリリースされるらしい。


あ、俺の名は悠・阿久井・メディチ。今年で40歳。私立万梨阿学園で現国の教師と文芸部の顧問をやってます。

そして何を隠そう文芸部の初代部長だったりする。コミケも現役だぜ…冬だけだがな!


嫁さんの名前はサラ・阿久井・メディチ。同じ学校で英語の教師をやってる。

赤毛のクオーターのアメリカ人。出会いはコミケ会場だったりする。


そして娘もひとりいる名前は八恵・阿久井・メディチ。16歳でこの学校の生徒。オタクな両親に似ずバスケットボールでの特待生だ。


あ、リア充爆発しろとか聞こえてくる。

まあなんだ。嫁さんの祖母がこの学校の理事長で俺は婿養子に入ったからその辺は肩身が狭い。

子供がいるだけマシともいうが。


俺は文芸部の部室に入る。


「先生お疲れさまです」


部屋には最新の月刊少女漫画誌を読みながら紅茶を飲んでいる嫁さんがいた。彼女は漫研の顧問である。

しかし何時みても同じ40歳には見えないな。下手したら30代前半に見られる。肌に皺が無いのが原因だが。


「サラ先生…ああ、鎌足が応募した作品の発表号ですか」


「はい。新人賞だそうです」


パーテーションパネルで文芸部と隔てられた漫研部室の奥には数人の生徒に囲まれてテレテレしている黒髪ロングの眼鏡っ子がいた。

彼女が現漫研部長の鎌足峰子だ。

視線が合ったので手を上げて祝意を示す。

この学校3人目の有名人…の候補だからな。


「こんにちは!」


「おうこんにちは」


文芸部の部員が俺を見て挨拶してきたので挨拶を返す。


「さてと…」


俺は自分の席に座り私用のパソコンを立ち上げ、すかさず電子研謹製のキャラクターエディターを立ち上げる。

作っているのは人間の女建築師だ。


チート能力は土を掘削し圧縮し岩を生成できるという能力。

西洋風のレンガの家なら3時間もかからない。大阪城程度なら5日で作れる力だ。

そう。仮想世界に僕の考えたすごい城とか作る予定。

その為の資料もデータとしてガンガンサーバーに落とし込んでいる。江戸城、大阪城、姫路城。作者が許可すればすぐに再現するのだ。


ちなみに嫁さんは漫研顧問の特権を行使して赤毛で美形で男のダークエルフ。

チート能力は全ての言語修得。精霊との会話も不自由なし(精霊魔法を奥義レベルで習得)という精霊使いというキャラクターを作っている。


あと娘の八恵のデータも作っている。種族はハーフエルフの女魔法剣士。

八恵のチート能力…いまは身体強化と経験値取得3倍が選択されている。アイテムボックスはチートではなく必須だ。

仮想世界でも三人は夫婦親子の関係だ。

俺と嫁さんの性別が逆転しているのは…ロールプレイの一環で特に意味はない。


「さて、チート能力はどうするかね…」


娘のチート能力を追加しようとしたそのとき…世界が揺れた。

今世紀に入って日本を襲う3度目の大地震だと確信したとき、俺はすぐさま嫁さんの元に走った。

嫁さんがパニックを起こしているのが容易に想像がついたからだ。


「悠!」


嫁さんが俺に気付き駆け寄ってくる。

まずは嫁さんの安全ゲット。次に娘…この時間なら体育館。そう思った瞬間に世界が光に包まれた。

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