最終章 君が泣いた日 #4

1月2日


「あーぁ。今日はせっかく龍馬君が来てくれるからワクワクしてたのにー。雨だとテンション下がるなぁ~。」


「でも、龍馬君が来てくれたらすぐにテンション上がるでしょ?この時期に雨だと路面が凍って危ないわね。」


「うん。そうだけどー。ってなんですかそのにやけ顔!!」


優香先生と話していると心が落ち着く。



雨は昨日の夜から降っている。


気温は氷点下近くまで下がりとても寒く、滑りやすくなっているというニュースがテレビから流れている。


こんなに寒いのなら雪が降ってしまえばいいのに。


この地域はなかなか雪が降らない。


山と山の間に挟まれていて、雪雲が山を越えられないのだそうだ。


暇だなぁ~ なんて思っているとまだ絵が完成していないことを思いだした。


スケッチブックをトートバッグから取り出すと、優香先生が覗きこんできた。


「なに描いてるの?」


「龍馬君の絵。私の救世主だから!」


ふふふっ、と優香先生は笑って病室から出て行ってしまった。


また茶化された。


私の絵は自分で言うのもおかしいけど、上手い方だ。


小学生、中学生の時にコンクールに出したところ、毎回入賞していた。


影の使いこなしも上達してきた気がする。


そんなこんなで残るは髪の毛の細かい部分となった。


つやを出すための工夫があるのだが、私のやり方は一味違う。


再びスケッチブックにペンを当てようとしたその時、優香先生が蒼白そうはくな表情で病室に飛び込んできた。

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