最終章 君が泣いた日 #5

「龍馬君が交通事故にあったみたいで、危ない状態みたい!!一緒に来て!!」


大きな声で私に言うと私の手を取って走ってはいけない病院の廊下を駆け抜けた。


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しばらく館内を走った。


着いた場所は集中治療室。


優香先生が私に待つように言って中へ入っていった。


すぐに緊急治療室から出て来て隣の大きめな病室に案内された。


そこには彼の両親と思われる人と、3人の龍馬の同級生と思われる男女がいた。


....女の人達はみんな泣き崩れている。


お母さんと思われる人の肩を抱いているのが彼のお父さんなのだろう。


同級生のうちの男の子は病室の隅っこで唇を噛み、何かをこらえているようだ。


小さく肩が震えている。


.....え?...笑っているの?.....だとしたらこれは全部演技....?


ゆっくり歩きだんだんと彼に近づく。


......ねぇ。もう演技はいいからさ。


......ねぇ。もう閉じてる目、開けていいからさ。


龍馬君の肩に手を当てて揺さぶる。


「ねぇ!!お願い、お願いだから演技って言って!!! .... ねぇ!!!龍馬君!!起きて、起きて、起きてってば........!」


涙がこぼれる。


服に涙の染みができる。


「....ねぇ!これで私、泣けるようになったよ?もう、終わりでいいよ!だから、だから目をあけて!!」


前が見えないほど、私の目に涙が溢れる。


皮肉なことに、私の『笑う』という表情は彼との出会いから、『泣く』という表情は彼の死によって取り戻された。


「...こんなことになるのだったら表情なんて取り戻したくなかった!」


「おい!お前!!なんてことを言うんだよ!アイツはお前のためにやったんだよ!!それを勝手に否定するな!!!」


先ほどまで病室のすみにいて唇を噛んでいた男の子が声をあららげた。


...なにも返せなかった。


返す言葉も気力もなかった。


「....これ、龍馬が最期さいごまで大事に持ってた。これをあなたへ渡してくれって頼まれたの。」


同級生と思われる女の子に渡されたノートには『表情日記』と書かれていた。


パラパラとページをめくると、今までの私との生活を日記にしたものだった。

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