最終章 君が泣いた日 #1

『タキサイキア現象』を知っているだろうか?


事故直前や、危ないと感じた時にスローモーションのように感じる現象である。


厳密に言うと、視覚の時間的な精度が上がるらしいのだが、まぁそんな状態が今起きている。


前のめりにコケたのでどんどん床が目の前にくる。


なんとか両手で手を付くことができ、顔面を強打することを防ぐことが出来たがなんとも無様ぶざまな格好になってしまった。


「大丈夫?」


ぐっ、こんなところでこっちをガン見してた人に助けを求める訳にはいかない....!


と思って立ち上がったが、足に力が入らない。


再びしゃがみこみ、仕方なく頼むことにしたが悔しかったのでちょっと強い口調になってしまった。


よくよく考えてみると、助けてもらうのにも関わらずなんて私は図々しいのだろうと思った。


そんな私の口調を気にしていないかのように彼は優しかった。


見た感じ、片足を痛めてるようだが、車椅子を譲ってくれ、病室まで連れていってくれた。


私の胸はすごく締め付けられた。


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