1章 君と出会う #5

12月28日


目が覚めるとナースの 加藤かとうさんが僕の顔を覗き込んで、「大丈夫みたいですね~」

と言って部屋から出ていってしまった。


何が起こったのかと混乱していると、椅子に座っていた母さんが事情を話してくれた。


どうやら昨日、ローストチキンの話をしている途中で急に倒れてしまったらしい。


たしかに、あの後の記憶がない。


慌てて母さんがナースさんを呼ぶとストレッチャーで僕を検査室まで運び、CTスキャンや、MRIの検査が始められたらしい。


結局、異常は見つからなかったそうだ。


テンションが上がり、心拍数も上がり過ぎ、意識が飛ぶというなんとも悲しい気絶の仕方だが、まぁ、大したことは無くてよかったと思った。


今日から始まるリハビリは本来は午前8:00からの予定だったが、1時間30分遅れての開始となった。



リハビリって聞くと『横に長いポールをつたって歩く練習をする』というイメージがある人が多いが、それはだいぶ後のことらしい。


始めにやるのは固まってきた筋肉をほぐすことだった。



リハビリ担当の横田よこた 和希かずきさん(ネームプレートを見て知った。)に、サポートされながらゆっくりと足を回したり、軽めにぷらぷらさせたりした。


あっという間に時間が流れ、今日のリハビリの時間は終わった。


リハビリ室を出て自分の病室に戻ろうと、少し慣れてきた道を進んでいると、これまた慣れてきたように少女はまた独りでいた。


「ん?」


一瞬、目が合った気がしたけど気のせいだろうと思い、再び車椅子を進めた。


だが、なぜか少女はズンズンと僕の方に歩みを進め、近づいてきた。


そして、目の前にくる直前で少女は盛大にコケた。

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