1章 君と出会う #3

途中の『ふれあい広場』では、また少女が独りでいた。


まぁ、さっきここを通ってから30分も経ってないから待ち合わせした人がまだ来てないのも無理はない。そもそも独りでいるのが好きなのかもしれない。


どちらにせよ僕には関係のないことだ。


そう思った僕はエレベーターで病室のある5階までのぼった。


病室のドアが半開きになっている。


誰かいるのだろうか。


かあさんはもう、僕がコンビニに行く前に入院するための着替えを準備するために一度帰ったはずだし... 誰だろう?


おそるおそるドアを開けると見覚えのある人物が3人で話していた。


彼らは僕のクラスメイトだ。


こちらに気づいた様で、「まったく、大丈夫かよ? ドジだなぁー」と言うのは僕の親友の北条ほうじょう 飛鳥あすか


こいつとはよく、夏は海に、冬はスキーに行っている。


「うるせーよ」と、こんな口調で言えるのはこいつぐらいだ。


なにせ、くさえんってやつなのか、もう7年も一緒にいるくらいだからだ。


「もー!危ない運転とかしてたんじゃないのー?でも、骨折だけですんで良かったー。」


そう言った彼女は、僕の隣の家に住む 二階堂にかいどう あいだ。


僕と彼女は幼い頃から一緒に遊んだり、ご飯を一緒に食べたりしていた。


小、中学校の時は僕、飛鳥あすかあいというこのメンツでよく登校したものだ。


『白線から出ちゃだめゲーム』や、『電車ごっこ』『刑事ごっこ』など、今思い返せば懐かしいものだ。


「危ない運転なんてしてないってー。まぁ、あまり記憶ないからわからないけどな~。」

と自分で言っておきながら、ふと考えてみるとたしかに事故を起こした時の状況が記憶になかった。


「岡田くん、川田かわた先生から頼まれた物を持ってきました。それにしても痛々しい様子ですね。」


そう言うのは我らが2年A組のクラス委員長の夏河なつかわ 涼華すずかさんだ。


夏河さんはかわいいというより綺麗な人で、クラスのほぼ全員から支持を受けている。


ちなみに川田先生っていうのは僕たちの担任の先生だ。


おっとりとしていて、授業も眠くなってしまう喋り方だ。


夏河さんから受け取った紙袋には授業内容が書かれたプリントが入っていた。


「わざわざありがとう。委員長の仕事も大変だね。」


宿題が入っていなくて、内心ほっとしたのは僕だけの秘密だ。


「じゃあ、俺たちはもう帰るよ。しっかり治してから学校に来いよー。」と言って彼らは出ていってしまった。


まぁ、少し疲れたし、休もうと思ってたからちょうどよかった。


ベッドに上がろうとしたけど、いつもと違って足が動かないので結局上がれなかった。

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