電話(1)

【SGAというのはセカンド・ギア・アームズでV1300はバージョン1300だな】

「第二の魔構兵器?」

【ギアが魔構を指すのは半分当たりと言える】

「半分?」

【ギアはな、大戦を生き抜いた連中にとって、最も忌むべき名前らしい。

 うちの総帥が名前聞いただけで、ワイングラス握りつぶしたからなあ。ったく、ホテルの備品になんてことを】

 電話の向こうで乾いた笑いが響く。電話の相手は若い男の声だ。

【ワールド・ギア。名前ぐらい聞いたことあるだろう?】

「アメリカが本拠地の魔構企業? 確か、ギア財団というのがあったな」

【それだ。魔構に魔法研究に傭兵斡旋。手広くやっているよ】

「傭兵斡旋? 真海がやっているような?」

【真海が傭兵斡旋業の光だとすれば、ギアは闇だな。暗殺、襲撃、強盗、国潰し、世界でも悪名高い傭兵達に仕事を流している】

「闇・・・・・・」

【聞きたいのはロート・ラヴィーネだな?

 俺とリチャードがお前の師の指揮でやったイーバーン掃討作戦。あれで殲滅したはずだったんだが。指揮官ミヒャイル・マルゴットは影武者で、部下数名と共にギアに拾われていたらしい】

 それがワールド・ギア製の魔構製品を使っていた理由だろうか。

【半年前、神州側防犯カメラに当の本人が神祇官と仲良くちゃんと映っていた。

 問題は、その場にロイド・ギアがいたことか。ロイド・ギアは財団ナンバースリーに数えられるいわゆる幹部だな。

 傭兵斡旋のためだけに、事実上の敵国にやってくるとも考え難い】

「接触していた神祇官から調べてみるか?」

【いや、調べるのはこっちでやる。少し、気になることもあるからな。お前は自分のクエストに集中しろ】

「分かった」

【あとな。琴葉の魔薬解呪方法について、うちの総帥からの伝言がある】

「メルカードの魔女が俺に?」

【魔女と呼ばれるだけあって、魔薬には詳しいんだろうよ。で、その方法だが】

 内容を聞いて、吐息。

【確かに伝えたぞ。じゃあな】

 電話を切って一言。

「それは・・・・・・盲点だった」

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