第14話水着と言えばポロリですよね(海)
「・・・・・・」
ボクは目の前の景色に感嘆し、言葉を失っていた。
「ふんっ。どや?なかなかええ眺めやろー?」
視界に入って来たのは美しいマリンブルーと、ひとっこひとりいない白い砂浜。
そして・・・
「和乃ちゃん・・・これ流石に変じゃないかな・・・?」
真夏の日光に照らされた瑞希さんの肢体。
だが、瑞希さんはその肢体を隠すように、一枚のタオルを身につけていた。
「全然変ちゃうって。そんなことより、いつまでもタオルなんか巻いてんと、せっかくの海やねんから肌は露出せなあかん・・・でっ」
半ば強引に、神咲さんが瑞希さんの羽織っていたタオルを剥ぎ取った。
「ひゃぁっ」
露わとなった瑞希さんの肢体はとても美しく、ボクは無意識に見とれてしまった。
瑞希さんが身に纏っていた水着は、数日前に見たものとはと違った少し面積が少ないビキニだった。
リボンで結んだ団子状の髪、白い肌、人形のような華奢な手足、さらけ出された鎖骨、羞恥心から薄桃色に染まったほっぺ、普段とはまた違った瑞希さんのあられもない姿・・・。
そんなものを見てしまったボクはテンションが急上昇し、手を合わせこのような機会を作ってくださった神に祈りを捧げた。
アーメン。
「もうっ!ハル兄、鼻の下伸ばしすぎ!」
彩奈に後頭部を叩かれ、やっとまともな意識を取り戻した。
つーかボク、無宗教だった。
「ハ、ハル君・・・どう、かな?和乃ちゃんと一緒に選んだ水着なんだけど・・・」
「はっ、はい。それはもうすっっっごく、瑞希さんに似合ってます」
「そう・・・かな?あ、ありがと」
「むううう」
彩奈がふくれっ面で睨んでくるが、ボクの蕩けた顔はなかなか戻らなかった。
その後、シートやパラソルなどの組み立てを終えると、神咲さんがカバンの中をまさぐりながら言った。
「よしっ、まずは遊ぶ前に日焼け止め塗ろかー」
「そうだね。じゃあ、私が和乃ちゃんの背中塗ってあげるよ」
神咲さんは水着の紐を解き、シートの上に寝転がった。
こういう時、視線をどこに向けたらいいのかよくわからない。
「ハル兄、ハル兄っ。私も背中に日焼け止め、塗って欲しいなっ」
とりあえず海の方に向けていた視線の先に、彩奈が飛び跳ねて入って来た。
勢いよく飛び跳ねる彩奈の胸は、反動で上下にそれはもうバインバインに揺れていた。
「そ、そんなの自分で出来るだろう?」
無意識のうちに視線が胸の方に誘われている気付き、首を大きく横に振り、薄れていた自意識を取り戻しながら、また視線を移動させた。
「だって塗り残しがあって変に日焼けするの嫌なんだもん・・・」
「・・・わ、わかったよ」
確かに言い分は理解できるのだが、それをボクに託すのはちょっとやめて欲しい。
だが、彩奈に上目遣いをされ、ボクは拒否権を海の底へ投げ捨てた。
「・・・ひゃんっ」
「ちょ、変な声出すなよ」
「ハル兄が急にくるから・・・」
「・・・悪かったよ。じゃあいくぞ」
目の前には何も身につけていないあらわとなった背中、その少し上には普段は髪の毛に隠れて見えないであろううなじ、そんなものを見てしまうとボクの気持ちも高ぶるものも自然の原理な訳で・・・。
ああ、いかんいかん。たかが妹の体で何をこんなに動揺してるんだボクは。
「ほ、ほら。終わったぞ」
「うん、ありがとハル兄」
ふう、よくやったボクの自制心。
と、自分で自分を褒め称えていると、瑞希さんたちも塗り終えたのか日陰から出て来た。
「ハル君ー。まずは定番のビーチバレーしよっか」
「そうですね」
「ま、でも普通にしてても面白くないし、落とした人は罰ゲームにしよかー」
「どんなことをするの?」
「んー、せやなー・・・。じゃあ落とした人は他の三人からの命令を一つだけ聞くってことで。ほいっ、いくでっ」
「うわぁっ、は、はい、ハル君っ」
「よしっ、行くぞ、彩奈」
瑞希さんからパスされたボールをボクは彩奈へパスした。
「とりゃあっ!」
軽くパスしたボールを彩奈は、ボクに思いっきり打ち返して来た。
そんなにもボクに罰ゲームをくらわせたかったのか・・・。
「あっ、ビーチボールが・・・」
だが、ビーチボールはボクの頭上のはるか上を通り過ぎ、後ろの海へ飛んで行ってしまった。
「あ・・・ご、ごめんなさい」
「はぁ、ボクが取ってくるよ」
海の強い波と浜風によって、ビーチボールはギリギリ目視できるくらいの距離になっていた。
取ってくるといってきたにも関わらず途中で諦めるのもカッコ悪いと思い、ボクは仕方なくビーチボールを追って泳いでいた。
「・・・いつっ」
すると、突然右足首に電流が走ったかのような強い痛みを感じた。
「うぐっ・・・」
痛みの原因を解明しようと足の方を見てみると、右足首のあたりに白い靄のようなものが絡み付いているのが見えた。
「これって・・・」
クラゲに刺されたと理解した時には、もうすでに意識が薄れかけており、ボクの体はどんどんと海の中に沈んでいってしまった。
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