第13話ファーストキスはどんな味ですか?(愛)



「な、な、な、何してるのよハル兄」


 ボクの唇と瑞希の唇が触れ合うまで後少しというところで、彩奈が部屋に入ってきて、持っていた布団叩きでボクの顔を思いっきりぶったたいた。


「私が布団干してる間に女の子を連れ込んで何しようとしてたのよ」


 彩奈からくらった一撃で、ボクは気づいてしまった。


 これは現実であると……。


「あの、すいません。インターホンを押したんですけどでなかったのであがらしてもらってます。ハル君の弟子の白河 瑞希です」


 瑞希さんは礼儀正しく彩奈に挨拶をした。


「泥棒猫の名前なんてどうでもいいわ……って弟子ってどういうことなのよ」


「それは、私がハル君に保健の授業のご鞭撻する師匠になってほしいとお願いしたので」


「や、や、やっぱりそんな関係だったのね」


「ちょっ、ちょっと瑞希さん。その言い方だとだいぶ語弊がありますよ」


「じゃあどういうことなのよ。ハル兄」


 なぜか彩奈は涙目になり鼻をすすりながら言った。


「えっとなー、えーと」


 関係をうまく説明することができず、ボクは口ごもってしまった。


「やっぱり説明できないんじゃない。つまりはそう言う関係なんでしょ。私の知ってる純真無垢だった頃のハル兄はいなくなちゃったんだー。うわーん」


 彩奈は泣き喚きながら部屋から飛び出ていった。




「なんだかすごく元気のいい妹さんだね」


 愛想笑いを浮かべる瑞希さんに、素朴な疑問をぶつけてみた。


「って言うかなんで瑞希さんがボクの部屋にいるんですか?」


「和乃ちゃんから聞いてないの?」


「そういえばなんかメールが来てたような……」


 充電していたケータイを見てみると、画面にはおびただしい数の神咲さんからのメールが来ていた。

 少しスクロールしてみるが、終わりが全く見えない。


 恐る恐る最新のメールを開いてみると、ボクの返信に対しての返信が書かれていた。


『暇やったら、うちの家が所有するビーチに行かへん?』


 一つ前のメールも同じ文章が綴られていた。どうやら手遊びのように連打したのだろう。

 そのおかげで、ケータイの充電がまだ少ししかできていない。


「えっと、どうして神咲さんからのビーチへの誘いから、瑞希さんの抜き打ちの自宅訪問につながるんですか?」


「和乃ちゃんがハル君のことを睡姦してこいって言って来たから・・・それで睡姦ってどういう意味?」


「……なんで青姦は知ってて睡姦は知らないんですか?」


「???」


 頭上にはてなマークをいくつも浮かべている瑞希さんにどう説明しようか悩んでいると、急に窓がガラリと開いた。


「瑞希。睡姦ってのは寝込みを襲うことやで」


 窓から平然と入って来た神咲さんが意味を言うと、瑞希さんはまた赤面していた。


「ちょっと、なんで家まで来ちゃうんですか?」


「なんやなんや、説教かいな。うちは君に感謝さえされど、叱咤されるいわれはないと思うけどなー」


「……」


「寝起きに天使がおってええ思いできたやろ?」


「ま、まあ」


 その結果、夢と勘違いしてキスしそうになったことは言わないでおこう。


「そんで?来れるん?」


「えっと、何がですか?」


「海へ遊びに来れるのかって話やったやん」


「あっ、はい。それは、まあ」


「んじゃーけってーい。はな、はよ行こかー!」


 やたらテンションの高い神咲さんは、まだ少し赤い頬を隠すようにしている瑞希さんの手とボクの手を掴み、部屋の外へ向かった。


「いや、準備くらいさせてくださいよ」


「そかそか。んじゃ外で待ってるなー」


 そう言ってから、神咲さんは瑞希さんを連れて玄関へ行った。


 その後、ボクはタンスの奥にしまっていた水着を取り出しそれをカバンの中に入れ、外に出ようと廊下を歩いていると、


「どこ行くのよハル兄」


 後ろから彩奈に服の裾を掴まれた。


「あーいや、なんか知んないけど、今から海に行くことになってなー」


 なんだか機嫌の悪い彩奈に説明をしていると、玄関から神崎さんがボクを呼んだ。


「おーい。はよーせんとうちらの水着姿を拝むチャンスが無くなってまうぞー」


「ま、また女の人が増えてる……」


「んんー?その子君の妹ちゃん?」


 彩奈は凄い剣幕で足音を立てながら玄関に行き、神咲さんの目の前に立った。


「あなたはハル兄とどんなご関係なんですか?」


 彩奈がやたら攻撃的な口調で言うと、神咲さんはボクに視線を向けニタっと笑った後、モジモジしながら言った。


「んーせやなー、うちの家に来た時に、ヤらせてくださいって言い寄られたりする関係ってとこかな」


「いや、ボクはそんな変な意味を込めて言ってませんから」


 神咲さんの発言に、彩奈は顔をうつむかせながら呟いた。


「……行きます」


「ん?」


「……海、私も行きます。ハル兄の純潔は私が守ります」


 彩奈はボクの腕に抱きつきながら、そう宣言した。


「まあ、大人数の方が楽しいし、妹ちゃんも一緒に行こかー。じゃ、外で待っとくねー」


 神咲さんはほっぺを膨らませらがら睨んでくる彩奈を軽くあしらい、外へ出て行った。

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