第3章「編集長、仲島会五郎」
(1)
「うっま〜、やっぱ二ヶ月ぶりのカクテルはうまいわ〜。」
そう言うと、塞杖はブラッディマリー片手に
盛り合わせのブリ刺しを箸でひと突きにし
分厚いままで一口にしてほうりこむ。
「うひゃ、うひゃっ、うひゅ!」
そうして口元を押さえつつ
歓喜の声をあげる塞杖は阿呆そのものであり
鳴鐘は塞杖のそんな様子を眺めながら
あきれ顔で熱燗をすすった。
…ここは駅の近くにある繁華街の居酒屋。
その奥にあるテーブルに鳴鐘と塞杖は座っている。
ここに来るのは二人ともふた月ぶりであり、
当時、塞杖はしこたま酒と食事を要求し、
金は鳴鐘が払う事となった。
…今回もそんな感じなんだろうなあ。
そんなことを思いつつ、鳴鐘は以前の教訓から学び、
塞杖が時間制限付きの飲み放題コースを選んだ事に
内心ホッとしていた。
すでに塞杖は、開始40分で6杯目にあたる
ピーチウーロンに手を付けている。
それをぐびぐび美味そうに飲みながら、
ふいに鳴鐘に気づいたかのように、
グラスを掲げ持つ。
「ちょっとぉ、やっくん、飲んでるウ?」
…酔っぱらい特有のからみ。
大学時代から変わらない塞杖に、
鳴鐘は手慣れた様子で応える。
「…飲んでるよ。」
そしてもうずいぶんとぬるくなった熱燗に手を付ける。
手前のサラダは随分と減ってはいたが、
それ以上食べるでも無く
机の上に置いたスマートフォンを熱心に見つめる。
その様子に気づいたのか、塞杖はさらに絡んで来た。
「やっくん、なあに読んでるのさァ。」
すでに酔いがまわり目がとろんとしてきた塞杖に対し、
鳴鐘は何も言わずにそこに描かれていたイラストを見せる。
…そこには、鐘を持つ老人が船から降りる絵が描かれていた。
とたんに酔いが冷めたらしく、塞杖は嫌そうに声を上げた。
「…これ、『スナーク狩り』じゃん。何今更読んでるのさ、
そんな子供向けの話…。」
そして塞杖はふてくされた様子で刺身のつまのタンポポを取ると
かじり始める。
鳴鐘は、そんな塞杖にかまわずに話を進める。
「…知っているなら話は早い。『スナーク狩り 8章の苦悶』
これは、ルイスキャロルの書いた小説だ。」
塞杖もちらりと横目でスマホを見つめ、ため息をつく。
「確か、鐘を持った船頭に靴屋に弁護士といった
変わった連中が正体不明の生き物、『スナーク』を
探して右往左往する話でしょ。」
「…でも、あたし、あの話が気に入らないんだよね。」
そして塞杖は空になったグラスを店員に見せ、
次いで持って来てもらった
カシスオレンジに口を付ける。
つまらなそうな態度を取りつつも、
プロのジャーナリストとして話を聞こうとしている
塞杖の様子に鳴鐘はそのまま話を続ける。
「…老人ホームで亡くなった二人のうち、
一人がこの言葉を壁に書き付けていた。
そして、机の上に残されたメモには『匂う』
という文字が大量にあった…。」
「…もう、いいじゃん。今日はその事考えないで飲もうよ。」
「それらの事をこの話に当てはめたとすると、
老人たちにはわかったのかもしれない…
『すなあく』という何かが。」
「…じゃあ、『何か』ってなによ。」
塞杖のその言葉に対し、鳴鐘は首を横に振る。
「そこまではわからない。ただ、それを解くには
この物語が重要なカギになる気がするのさ…。」
「ふうん。」
それを聞くと、塞杖は店員を呼び、
自身の酒の
カルーアミルクに手を付け始めた。
「…でもさ、もし本の通りとなると
…弁護士の人、やばいんじゃないの?」
…そう。確かに話の通りなら、
弁護士はこのあと正気をなくしてみつかる。
でも果たしてその程度で事は済むのか…。
鳴鐘はスマホを操作し、弁護士が出て来る辺りの
文章を読む。
「…そうかもしれないし、そうでもないかもしれない。
何しろ、この話も俺の憶測でしかないからな…。」
すると、塞杖は両手を広げて肩をすくめる。
「じゃあ、意味ないじゃん。
もっとそんなことよりも有益な…。」
そうして言葉を続けようとする塞杖は窓の外を見て声を上げた。
「あ!あれ仲島編集長じゃん。」
「…編集長?」
いぶかしげに聞く鳴鐘に、塞杖は身を乗り出して
窓の外に手を振りはじめる。
「ほら、あたしにツテがあるっていったじゃん。
それがあの人、仲島編集長。」
「…といっても、もう定年間際なんだけどさ。
あたしの大学卒業時から書いたものを拾ってくれて、
最近まで福祉関係の記事を担当していたんだけど…」
「…ああもう、まどろっこしい、
仲島サーン!こっちこっち!」
そうして開けようとしてガタガタ窓を揺する塞杖を
必死で止めつつ、鳴鐘は窓の外を見て…ふと気づく。
…なんだ?あの人、なにかふらふらしていないか?
「もう、仲島サンも飲みに誘おうよう。」
そして再び酔いが回りだしたのか塞杖は通路を歩き出し、
直接仲島のもとへと行こうとする。
しかし千鳥足のその様子では
とてもまともに歩けるとは思えない。
鳴鐘は一つため息をつくと財布を出した。
「…わかったよ。
ここは払っておくからもうちょっと待て。」
そうして鳴鐘はちょうど近くに来た店員を招き寄せ、
おあいそをもらうことにする。
そして金を支払っているあいだ、
なぜか、ある言葉が頭をよぎる。
『そのスナークはブージャムだった。』
それは、先ほど読んでいた小説の最後の部分。
かのルイスキャロルが思いつき、
そこから物語が生まれたという短文。
どうしてそれを思いついたのか。
どうしてそれを考えてしまったのか。
わからない。だが、なぜか気がかりだ。
鳴鐘はそそくさと会計を支払うと店を出る。
そして塞杖とともに仲島を…
一人の人物を二人でを追って行く形となった…。
(2)
「…なんだ?この美味そうな匂いは…?」
そうつぶやくと、
往来で鼻をひくつかせる…。
時刻は夜の8時過ぎ、繁華街には送別会の二次会に行く男女や
仕事帰りのサラリーマンがかっぽしている。
そんな中、片手に花束を持ち、ふらふらと左右に歩く仲島は
周囲からはひどく浮いてしまっていた。
しかし仲島の内心は鼻をくすぐるこの匂いの元に
早くたどり着きたいという気持ちでいっぱいであり、
半ば上の空の状態でもあった。
…美味そうな匂い、空腹をそそる匂い。
揚げ物にも近いが…?
以前、食レポでライターとしていくつか有名店に
足を運んだこともあるが、
ここまで美味そうな匂いにはついぞあったことがない。
右か、左か…。
そうして歩く仲島の視線の先に、一人の男が目に入る。
…それは、ひとつの紙袋を持った男。
薄汚れてはいたが、上物のスーツを着た中肉中背の男。
後ろ姿で顔こそ見えないものの、
どこかの店に入ろうとする素振りを
幾度も見せる男…。
仲島はすんっとひとつ匂いを嗅ぐと、
その男の元にすりよる。
「…もし、あの私こういう者なのですが…。」
そう言って、仲島は懐に手を入れ、ハッと気がつく。
…いかん、名刺は社員証と一緒に会社に返して来たんだ。
これじゃあ身分を証明するものが無い。
…今までなら、名刺一つで雑誌の編集長だと言って
話ができたのに…。
そうして、定年退職をした自身に歯がゆい想いを募らせる
仲島に対し、男はこちらを向くと、
不信感を抱いた様子も無く、こう応えた。
「…ああ、もしかしてあなた、これが気になったんですか?」
男はそう言うと、持った紙袋をかさりと動かす。
その途端、漏れる芳香が鼻腔をくすぐり、
仲島は生唾をぐびりと飲んだ。
それは、先ほど嗅いだ匂いで間違いない。
あの美味そうな芳香の正体がこの中にある…。
「…わかるかね、私がそれが気になっている事を…。」
男はそれを聞き、にこりと笑う。
よく見るとその瞳は青色で、
仲島はどこの国の人なのかと内心いぶかしむ。
しかし、そんなことよりも今はこの紙袋の中身が気になる。
仲島は慌てたように男についてきてしまったことを詫び、
袋の事についてあたらめて尋ねた。
「はは、よくあることです…特に年齢を重ねた方ほど、
この匂いの深さがわかるみたいでね…
ときおり、あなたのような人と出会いますから。」
そうして、男は仲島を連れ出し、繁華街の少し先、
人気の無い高架橋下の公園のベンチに座った。
秋の半ば、高架橋の下にはときおり冷たい風が吹き、
頭上では車のとおりすぎる音がする。
「…どうぞ、箸は無いけど、つまようじならありますから。」
そうして、男が紙袋から出したタッパーを開けると、
その芳香がふわりと周囲に立ちこめた。
途端、仲島の腹がぐうとなった。
…それは、少々冷めたものの、
上物の唐揚げで間違いなかった。
仲島は今すぐにでもかぶりつきたい衝動を必死に押さえ、
お礼にと近くの自販機で買った缶ビールを男に勧める。
「…ああ、いえ。自分は下戸な者でお酒はあんまり…。」
そうして控えめに笑う男を仲島は少し不思議に思う。
…おかしい、じゃあなぜこの男は繁華街を歩いていたのか…。
すると、その答えを男自身が話し出す。
「ああ、居酒屋を覗いていたのはこれのためなんです。
私が家で作って来た地場産の唐揚げなんですけど、
何とか店で売ってもらえないかと考えあぐねていまして。」
「でも、こんなデキソコナイの唐揚げ…
果たしてどこで扱ってもらえるか…。」
そう言いつつも肩を落とす男に、仲島は辛抱たまらずこう言った。
「…だったら、私が一口食べてその価値をはかってみよう。
今こそ引退した身だが、私は雑誌の編集者だったからね。
グルメ誌もいくつか担当して名店に足を運んでいるし、
…味にはうるさいつもりだ。」
「…だから、私にそれを食べさせてくれ。
君のその揚げ物からは、
…その一流の味がする気がするんだよ…!」
気がつけば、いささか過剰とも言えるほどに
熱っぽく仲島は男に語りかけていた。
もはや定年という事さえ忘れ、
現役気分の仲島は身を乗り出して続ける。
「絶対に損は無い。
むしろ、ここで喰わせてもらえないのなら
私はこの場で死んでも良いくらいだ。
…たのむ!食べさせてくれ。」
しかし男はその言葉にぽかんとし、
やがて恥ずかしげに袋に入っていたつまようじを出すと、
それを仲島にさしだす。
「…そこまで言っていただけると。こちらとしても本望です。
では、遠慮なく、どうぞ食べてください。」
その途端、仲島は我慢出来ず、
意地もプライドもかなぐり捨て、
男のつまようじをひったくり、
タッパーを開けると唐揚げに突き刺す。
とたんにじゅわっと肉汁があふれ出す。
口に放り込むと何とも言えない芳香が鼻を突き、
仲島の口内を満たした。
…これは、鳥?牛?豚?
いや、そのどれとも違う…違うが…。
衣は思ったよりも薄く、
サクッとした感触とともに口の中で溶けていく。
肉の風味は…今まで食べてきた、
どの肉とも似つかない。
だが、とても軽くまろやかで繊細な味であり、
仲島は続けて二つ三つと揚げ物を口の中へと
放り込んでいた。
それはまさに未知でありながら、
満ちという言葉以外見つからず、
その揚げ物を仲島はハフハフと食べ続け…。
「…ああ、食べきってしまいましたか。大丈夫ですよ。
家に行けばまだ余分がありますから。」
…男の声に気づいてみれば、タッパーの中は既に空であり、
それでも味が恋しいのか、
仲島は終わったつまようじさえ舐っていた。
「…ああ、すまない。あまりにもすばらしい味で…!」
そこまで言われると、
いささかばつが悪そうに口から放し、
仲島はつまようじをゴミ箱に捨てる。
その様子に男はニコニコと微笑むと、
タッパーを受け取り袋にしまった。
「喜んでいただけて何よりです、
でも本当は揚げたてや熱を加えたものなら
もっと美味しいんですよ。」
そこまで言われて仲島は思う。
…そうか、アレの揚げたて。
先ほど食べた冷めた揚げ物も格別だったが、
もし熱を加えたら…。
そう考えたところで仲島はほぼ初対面にも関わらず
男に詰め寄る。
「…な、なあ、もっとアレを食わせてくれないか?
揚げたてなら、もっと美味いんだろ?
熱を通したものでもいい!
家に行かせてくれ、喰わせてくれ。
もし、できなきゃ…せめて、何の材料で、
どういう風に作るかだけでも…!」
そう叫ぶ仲島に、男は冷静だった。
そして、口を開くとこう言った。
「無理です。あなたは『すなあく』を食べた。
…ゆえに、もうこれ以上時間はありません。」
…なんだ?この男は何を言っているんだ?
…だがそのとき、仲島は気づく。
自分の背後、公園の奥…その向こうから、
何かがゆっくりとやってくる。
…いや、それは気配。
姿形はわからない。
だが匂う。匂いがする。
それはえも言われぬ芳香。
美味そうな匂い。
それは仲島がほんの数分前に嗅いだ匂いであり…。
仲島が食べた『すなあく』と同じ香りは、
着実にこちらへと近づいて来ており…。
とっさに仲島は一つの可能性に気づき、男に詰め寄る。
「おい、俺が食べたあの食べ物…まさか、非合法のドラッグか?
それとも合成麻薬か?『すなあく』とか言ったな。何だ?
俺に何を喰わせた?言え!」
男は冷静な様子で仲島を見る。
「いえ、中毒性はありますが、麻薬ではありません。
平たく言えばただの『肉』ですよ。」
そう言うと、男はちらりと仲島の背後を見る。
「あ…あ…あ…。」
気がつくと、仲島は男から手を放し、
ゆっくり後じさっていた。
いや、違う。
これは向かっているのだ。
自分は匂いの元へと向かっているのだ。
そして仲島は匂いの方へと振り向く。
そこには闇があった。
ただの公園の一角でしかない闇。
だが、わかっていた。
頭ではわかっていた。
アレがここにいる。
アレとの距離がもはや数メートルも無いことを。
仲島は、一歩一歩進んでいく。
「食べたい、食べたい、食べたい…」
口からは欲望が、食への渇望が、
呪詛のような言葉を吐き出させながら仲島を動かす。
一歩、また一歩、
そうしてお互い0の距離になったところで
仲島は手を伸ばし…。
「…!!」
次の瞬間、仲島の右腕にしびれるような感覚が走った。
とっさに腕を見るも変わったところは無いようだ。
しかし、次の瞬間、仲島の腕はだらんと垂れ下がる。
まるで糸が切れたように、鉛のように動かない。
そして、今度は再び、
今度は自分の左足がしびれたような感覚を覚える。
仲島はそのままバランスを崩し、ぶざまに地面に崩れ落ちた。
必死に立とうと足を動かすも、やはり腕と同じく動かない。
「…ああ、もうダメですね。
そうなったら立つのは無理でしょう。」
いつしか男が仲島の前に座り込み、
そのもがく様子を眺めている。
「これが『ぶうじゃむ』です。
『すなあく』と同じ匂いがするでしょう。」
…そう、男の言う通り、
匂いは今や仲島を包み込むように覆っている。
それは確かに同じ、あの食べ物と同じ匂い…。
「そうやって、匂いで寄せて獲物を食べる。
それが『ぶうじゃむ』です。
でも、幼体とはいえあなたは幸運な方なんですよ?
まだ、見えるように肉体が喰われないから…。」
…この男は何を言っている?
疑問を持つ仲島に、男は立ち上がると元来た道を歩き出す。
仲島は必死にあがこうとするも這いずる事すらかなわない。
すでに…残りの手足にもしびれがはしっている。
「行…く…な…。」
仲島の中では疑問が渦巻いていた。
幼体とは何か。
見えるように肉体が喰われるとはどういうことか。
なぜ自分が幸運なほうなのか。
そして、『ぶうじゃむ』とは何なのか…。
しかし男はすでに背を向け、歩き始めている。
すでに、仲島も下半身の感覚が消えかけている。
いずれ、上半身も、そして体すべてが…。
仲島は悪夢の中にいた。
かつて自分の焦がれた芳香に包まれながら、
夢中になった味に自分は翻弄されている。
どうしてこうなったのか。
これからどうすればいいのか。
走馬灯のように記憶が踊り、仲島の頭をかすめていく。
…そのとき、一つの事を思い出した。
それは、定年間際。
可愛がっていたフリージャーナリストに頼んだ仕事。
確か、彼女に伝えていなかった事があった。
それは、ある法則。
死亡者の老人たちに共通するある部分。
…それを、伝えたかった…。
そうしてかすれゆく意識の中で仲島はおぼろげな人影を見つけ…。
(3)
「仲島サン、仲島サン、大丈夫ですか!?」
公園で仲島を見つけた塞杖は今や涙目で仲島に声をかける。
しかしうつぶせになった仲島の呼吸はすでに浅く、
その顔からは血の気がひきつつあった。
「塞杖、今救急車を呼んだ。
できれば近くに
「…いや、いい…別に…いい。」
気がつくと、蒼白になりつつある仲島が声を上げていた。
「…ああ、ミリちゃんじゃないか。
どうしたんだいこんなところで。」
塞杖は必死に声をかけ、仲島の意識を戻そうとする。
「仲島さん、下手に動いちゃダメですよ。
今、救急車が来ますから。」
そうして、仲島はぜぱぁと苦しそうに呼吸をすると
こう続けた。
「いいんだよ。それよりも、
運が良い…ミリちゃん、聞いてくれ。
君に教えた福祉施設と死亡者数の関係…
…あれには、実は…法則があるんだよ…」
「時期と場所を見てくれ…
そうすれば、自ずと答えはわかるから…。」
「ダメです、仲島さん。
そんな最後みたいなこと言わないで…。」
しかし、それが本当に最期だった。
仲島はぜぱぁとひと呼吸を置くと、呼吸を止めた。
「塞杖!何やってる!心臓マッサージをしろ!」
気がつけば、鳴鐘が人を集め
AEDを持って駆けつけて来ている。
塞杖は慌てたように仲島の心臓の箇所を探り当て、
必死に心臓マッサージをはじめる。
「仲島さん、死なないで、
死なないでくださいよお。」
いつしか塞杖はボロボロと泣いていた。
自分の恩人とも言えるべき人が、
最期の仕事を持って来た人が、
今まさに死のうとしている。
「ダメですから、ダメですから!」
塞杖は必死に心臓マッサージを続ける。
周りの喧噪も、必死にAEDを取り付ける
鳴鐘の様子も目に入らない。
やがて、向うで救急車のサイレンと
救急隊員の声が聞こえて来る。
そして、彼らの指示に従いつつも、
塞杖はぼろぼろと泣きながら、
その冷たくなった仲島の体から
…自らの手を、離した…。
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