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「嘉宮くん何か言ってない?」

「え、どこ」

「あれあれ」



私が指さしたのは体育倉庫の扉のすぐ側。ギャラリーからギリギリ見える位置に嘉宮くんが立っている。


他の部員達は、手分けして部活動後の片付けに取り掛かっているところで、嘉宮くんもまたボールを運び終えた後だったようだ。




ギャラリーにいた生徒達もぞろぞろと退出し私達2人と他数名だけになったので、嘉宮くんがどの位置を向いているのかはすぐに分かった。


私達に対し何かを言っているということだけは口の動きからわかるが、残念ながら口パクじゃあ何を言っているのか読み取れない。



だが美音は違ったようだ。


嘉宮くんの姿をとらえるなり、あー、と涼しい顔をする。そして親指を立て了承のサインを出すと、嘉宮くんは満足そうに頷いて片付けを再開した。



「分かったの?なんて?」




「あぁうん。一緒に帰ろうってさ」

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