7

「嘉宮くん何か言ってない?」

「え、どこ」

「あれあれ」



私が指さしたのは体育倉庫の扉のすぐ側。ギャラリーからギリギリ見える位置に嘉宮くんが立っている。


他の部員達は、手分けして部活動後の片付けに取り掛かっているところで、嘉宮くんもまたボールを運び終えた後だったようだ。




ギャラリーにいた生徒達もぞろぞろと退出し私達2人と他数名だけになったので、嘉宮くんがどの位置を向いているのかはすぐに分かった。


私達に対し何かを言っているということだけは口の動きからわかるが、残念ながら口パクじゃあ何を言っているのか読み取れない。



だが美音は違ったようだ。


嘉宮くんの姿をとらえるなり、あー、と涼しい顔をする。そして親指を立て了承のサインを出すと、嘉宮くんは満足そうに頷いて片付けを再開した。



「分かったの?なんて?」




「あぁうん。一緒に帰ろうってさ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る