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「本当は付き合ってるんやろ?朝倉くんと」
妙に楽しげにそう言うのは、昨日に引き続き今朝も私とソラちゃんの2人乗りを目撃したらしい、
美少女茶髪ちゃん…もとい、
一方その隣では、事実確認のため私の返答を不安気に待つ高身長ポニテちゃん…もとい、
私とソラちゃんの関係について知りたがるクラスメイトは案外多く、昨日のソラちゃんの自己紹介をきっかけに、こんな風に至る所で話題が飛び交うようになっていた。
特に今私の目の前にいる2人組、美音と菜月(通称なっちゃん)の食いつきようと言ったら…
「本当に!ソラちゃんはただの幼馴染みで何も無いから」と私が誤解を解こうとすると、
「えぇー、少女漫画やと幼馴染みの恋愛沙汰って王道やが…」と少しつまらなそうにぼやく美音。
美音は多分単純に恋バナが好きで、私とソラちゃんの関係にもほんの少し興味があるといった程度だろう。
もし両片思いならいくらでも背中押しまっせー!とついさっき割と軽いノリで言われてしまった。
それから、なんだか妙にソラちゃんの私に対する好意を恋絡みだと踏んでいるようだけど、一体どこから来るのか分からないその自信。
対するなっちゃんは、私の返答にほっと胸を撫で下ろし安堵のため息をついていた。
私とソラちゃんの関係が騒がれる度にそわそわと落ち着かない様子を見せ、一時的に誤解が晴れれば安堵の表情。
これって、もしかするともしかしなくても…
「なっちゃん。ソラちゃんのこと好き、だったりする?」
「えぇっ」
興味本位で聞いただけの質問だったが、どうやらそれは見事核心をついてしまったようだ。
あきらかに動揺を隠しきれず、あわあわと視線を泳がせるなっちゃん。
否定しないのならば、都合よく肯定ととることにしよう。
「あははーなちゅバレバレなんやってー」
白状しなー、と悪戯っぽく笑う美音。
口振りからしてとっくのとうに知っていたようだ。小学生の頃からの付き合いらしいので、以前から信頼のおける相手として相談を受けていたのかもしれない。
そんなことを考えていると、でも無理、となっちゃんのぼやき声が聞こえた。
「…だって朝倉くん人気高いもん」
「え、そうなの?」
うん…となっちゃんが頷く。
「放課後、男子バスケ部覗いてみ?ギャラリー女子ばっかやで。主に朝倉くん目当てのね。」
そこまで言って苦笑した美音は、ほらあれ、と言って窓側教卓側に出来ているクラスメイトの塊を指さした。
ガヤガヤと会話が飛び交うその輪の中心には、自身の席に座ったまま屈託ない笑顔を浮かべるソラちゃんの姿。
昨日もそうだったが、ソラちゃんがわざわざ動かずとも自然と周りに人が集まってくるようだ。そして、比率で言うと女子の方が若干多い。
「あの辺の女子はほとんど朝倉くん狙いの子」
「ひぇ」
あ、それで私とソラちゃんの関係性を気にする人が多いわけだ…
美音はソラちゃんを何とも思っていないようだが、ソラちゃんに好意を抱くなっちゃんや大半の女子からすると、いきなり現れた上に距離感近い私って…
「かなり危ないんじゃ…」
「
「…あのさ、ソラちゃんの想い人が私って…美音は一体どこからその自信が…?」
何言ってんの?とでも言いたげに、美音は眉をしかめて呆れ顔をする。
「バレバレじゃね?朝倉くんすぐ顔に出るし」となっちゃんに問いかける美音。
なっちゃんはうんうんと頷くと「愛華がうらやましいわ」と呟いた。
教室内がガヤガヤと賑わってきた頃、前方のスピーカーから授業前のチャイムがなった。
ガラガラと開かれた教卓側の扉から授業担当の先生が入室し、あちらこちらで散らばっていたクラスメイト達は渋々個々の席に戻っていく。
そんな中でも、名残惜しそうにソラちゃんの席から離れようとしない女子の何人かに、授業が始まるギリギリまで先生は注意を促していた。
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