第3話

Mirage-3


賑やかな通りからしばらく歩くと

薄暗い路地裏に小さなbarがポツンとあった


彼女は慣れた様子でドアに手をかけた


店内はオレンジ色の照明が灯り、馴染みの客らしき人達がマスターと楽しげに話してる。

彼女はその人達に軽く会釈してカウンターの奥に俺を案内した


「ここね、一人で飲みたくなったら来るの。

誰かを連れてきたのは初めてよ」


並んで座るとさっきまでの距離がグッと縮まり腕に彼女の肩が触れる




「そうなんだ。じゃあ、俺は気に入られたの?」


そう言ってサングラスを外した彼

ちょっぴり、淋しげな眼差しにドキとっして思わず目をそらした


「何?」


「うううん、何でもない」


「昔、好きだった人に似てる…とか?」


イタズラっぽく私の顔を覗きこむように彼が言うものだから、顔が熱くなるのが自分でもわかった


「そう…なんだ。ごめん、まさか、そんな定番な感じの訳だとは」


「定番で悪かったわね」


睨み返した私を見てふっと笑った彼が首を傾げて更にまじまじと見つめる

すっと伸びてきた彼の手が私の頬に添えられた


「お姉さん、よく見ると美人だね」


「からかわないでよ」


頬を触れられただけなのに、心臓がビクンとした


「俺のこと…知らないよね?」


「あっ、ごめんなさい、あのパーティーに出席してた人だから、きっと……そうなのよね?

でも、私ここ何年も仕事ばっかりで」


「いやっ、その方が嬉しいんだ

知らなくて俺に声かけてくれたんだ…」


「そうよ」



さっきの表情と変わってニコリと子供っぽく笑った彼女

クルクルと変化する表情に俺は引き込まれていった


「俺さっ、明日の夜まで時間があるんだ

今から…24時間

俺と付き合ってくれない?」


「え?24時間?」


「そっ、あなたの24時間を俺にくれない?」


「…わかった。いいわよ」



彼の言葉に躊躇うことなく、応じてしまった



行きずりの恋は

感じるままに進めばいい

それがほんとの恋になるのか?なんて、誰にもわからないのだから…。




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