第44話 モキュモキュ反省会

 クラーケンを倒した俺達は、ダイソン街のギルドへと戻ってきた。

 リナ達は先ほどの気持ちの悪いウェットスーツから既に普段着に着替えていて、水着回が終わってしまったことを痛感する。嘘だろ・・・・・・。


 ちなみに、クラーケンの素材は《完全誘導電磁法》によって大部分が焼けて換金不可能となってしまったので、おいしく食べることになった。もう絶対にあれ使うなよ?


「君は・・・・・・少し力不足なのではないかな」


 俺の体を刺し貫けるだけあり、クラーケンの触手は焼いてもすごく固い。

 俺達は少し離れた海辺で口に入れてからギルドに戻ってきたのに、未だに噛み切れていなかった。口の中にクラーケン汁が充満している。


 そんな中、クラーケンの触手を速攻で食い終わった《不可侵全裸》が俺に話しかけてきた。


「もちろん、君が兵士になったのが最近であることは理解している」

「モッキュモッキュ」


 俺はクラーケンの触手を噛んでいる最中なので、返事が出来ない。


「しかし英雄である者としては・・・・・・これから皆を導く存在としては、力も意識も足りないのではないだろうか?」

「モッキュモッキュ」


 《不可侵全裸》の言葉は真実そのままで、耳が痛かった。


 もしもリナ達の力が今より劣っていれば、全滅していたことさえあり得る。目からビームを撃ってただけだが・・・・・・。


「正直なところを言えば、君はリーダーの器ではないと思うよ」

「モッキュモッキュ」

「モッキュモッキュ! モッキュ!」


 厳しい言葉に俺は頷いたが、リナは反論してくれた。


「モッキュモッキュ」

「モッキュモッキュモッキュ!」

「モッキュゥ!」


 ロップとレイも俺を励ましてくれて、それを受けたリナがより強い反論を述べた。多分。


「・・・・・・何言ってるか分からないよ!」


 これまで常に冷静さを保っていた《不可侵全裸》だが、ついに声を張り上げて叫んだ。


 全くもってその通りだが、お前はお前で俺達が食べ終わるのを待ってからそういう話しろよ・・・・・・。


「ともかく、僕の目から見たらレイさん、あなたが一番能力のある兵士だ。出来ればで良いのだが、一時的にでもこの街の教会を任せても良いだろうか? この街の司教では追いつかないほどに重傷者が増えているんだ」

「モキュ!?」


 いきなりの提案にレイがむせる。


「モッキュモッキュモッキュ!」

「ああ、もちろんこれはクエスト扱いにして、ギルドから報酬は払おう」

「モッキュモッキュ!」

「受けてくれるんだね、有り難う」

「モッキュン!」


 レイは首をぶんぶん横に振っているのに、《不可侵全裸》は勝手に了承と受け取ったようだ。強引だなぁ・・・・・・。


 あと、クラーケンの触手を頬張ってモキュモキュ言ってるレイ、可愛いな。


「モッキュモッキュ!」

「有り難うね、有り難う」

「モッキュモッキュ!」


 レイが必死に断ろうとしているのに、《不可侵全裸》は適当に頷いてからギルドの奥へと引っ込んでしまう。


 強引だが、ここで断れたところで強制クエストになるだけだから意味もあるまい。リナも同じ事を考えていたのかため息をつき、同時に口の中のクラーケン汁がこぼれた。きたねぇ。


 それからモッキュモッキュすること一時間。

 やっと食べ終わったレイは、俺達に言った。


「話し合いの結果、お前らにも手伝ってもらうことになったから」

「モキュ!?」


 そんなの聞いてない!


 口の中に何も含んでいないのに、俺達は人外の叫び声を放った。


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