第31話 死に場所への行軍?

「このクエスト、厳しい戦いになりそうでやすね……」


 今回の強制クエストは、グラン平原に湧いたゾンビの全滅がクリア条件である。


 グラン平原は俺の初めての戦場であり、リナと出会った場所でもある思い出深い場所だ。

 死に場所としておあつらえ向き過ぎて、逆に怖い!


 俺はクエスト地点に向かいながらも、なんとか違約金を工面できないか考えていた。このクエスト受けたくない……。


「ゾンビって強いの?」


 嫌な予感しかしないので、ロップに質問する。


「へぇ。ゾンビに噛まれるとゾンビ化してしまいやすので、近接戦闘がやりづらいというのは大きな問題でやすね。遠隔攻撃が出来れば大した敵ではないでやすが、数が増えるとそれでも苦戦しやす」

「マジか。異世界でもゾンビ化あるのか」


 前から思っていたけどこの世界、ケンタウロスが出てきたり武器の名前にイフリートとあったりと、割となんでも出てくるよな。


 よりによって俺がリーダーの時に、そんな相手と戦いたくなかった。


「このクエストの一番嫌なところは、全滅が条件ってところでやすねぇ。趨勢によっては、当初よりクエストの難易度が上がっていくという可能性すらありやすから……」


 それはつまり、クエストメンバーがゾンビ化していくかもって話か! なんかもう、その時点で異世界ものの領分を越えてないか……。


「嫌だなぁ……帰りたいなぁ……」

「大丈夫ニャ、私が君を、守りきってみせるニャ」


 俺がぼやくと、リナが真剣な顔で、心強いことを言ってくれる。

 そうだ、俺が弱気なことを言ってる場合じゃない。たとえ虚勢であっても、俺はラノベ主人公らしくいなければ。


「皆のことは俺が守る!」

「なーんかずれてるんだよニャア……」


 流石に慣れたのか、リナは半眼ながらも微笑んでいた。






「えー、では今回の作戦をお伝えしますー……あー」


 ゾンビが発生している場所から少し離れたところで、俺はクエスト参加者達に作戦の説明をしていた。勿論俺は形だけのリーダーなので、作戦を立てたのは殆どがサブリーダーだ。


 大まかな作戦は街で既に伝えてあるのだが、ゾンビ化することを知った後にサブリーダーと話し合って、少しだけ作戦を変えさせてもらった。変更点を中心に伝える。


「ゾンビは人のいる方に向かってくる習性があるということで、それを利用して罠にはめる作戦でしたが……。皆さんのポジションを、ちょっと変えさせていただきます!」


 土壇場でのポジション替え宣言に、クエスト参加者達が騒然となった。


 作戦の急変は大抵がまずい状況の時に行われるものなので仕方がないが、作戦を立てる時に俺がゾンビのことを知らなかっただけなので申し訳ない気持ちになる。でもまぁ、生きるためだ。許してくれ。


「落とし穴に掛かったゾンビを倒す人が戦士系の人ばかりなので、ゾンビ映画の常識的に十中八九、なんかのアクシデントで誰かがゾンビ化します。なので安全策をとって、そこは遠隔魔法が得意な魔道士系の人にお願いします」

「えっ、じゃあ戦士系の人はどこにいれば……?」


 緊張で早口になってしまった俺の説明に、質問が飛んでくる。しかし俺は動じることなく自信満々に言ってやった。


「後方待機!!!」


 俺は死なないために、魔道士系の人が取り逃したゾンビを狩ることに徹することにしたのだ。

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