第8話 魔法学校の廊下は赤い
魔法学校への登録を終え、俺とリナはクエストが終わったばかりにも関わらず、流れるようにその日の六限の授業に参加することになった。
右脚から血が吹き出ていることを訴えたが、リナによるとそんなの構ってられないくらいこの授業は大切らしい。
注意深く観察すれば俺ら以外にも血を流しながら校舎をうろつく輩は多かったので、この世界ではクエスト帰りに治療もせず授業を受けることくらい常識なのだろう。あまり見習いたくはないが。
さて、そうまでして俺たちが受けに来た授業は「持続魔法体系」という授業。
魔法学校では常に、いくつかの授業が同時に行われている。そのため時間が空いている時に自分の受けたい授業を選んで受けられるそうだ。この自由感、最高!
「ところで持続魔法って何?」
右脚を痛めながら受けた授業がくだらないものだったらたまらないので、授業が始まる直前、俺はリナに授業の内容を聞いた。
「それも分からずについてきてたニャ? お人好しなのか単なる馬鹿なのか分からないニャ……」
「お、今の台詞、俺への好感度上がりはじめのヒロインっぽいね。君もなかなか分かってきたじゃないか」
「やっぱり単なる馬鹿だったニャ……」
俺のせいで話がそれたので(それくらいは分かる)、気を取り直してもう一度持続魔法について聞いた。
「持続魔法っていうのは、一度使うと自分で止めるまで発動し続ける魔法のことニャ。すぐに消えたり持続時間決まってたりする単発魔法だけしか覚えてないと、使い勝手が悪いのニャ」
つまり先ほどリナが使っていた風を出す魔法などとは違い、一度使えば長いこと発動し続ける魔法、ということか。
「なるほど、パッシブスキルが魔法扱いされてるみたいなものかな……? 攻撃力が上がる持続魔法とか防御力が上がる持続魔法とかがあって、それを使っておけば、魔法を使う前に奇襲されて殺されたりしづらくなるわけだ」
「パッシブスキルってのは分からないけど、その通りニャ。正直、ここまで伝わるとは思ってなかったニャ……」
まぁ人生の殆どをゲームとラノベに費やしてたら、こういう無駄な想像力だけはつくよね、うん。
何にしても持続魔法の重要性は分かった。
技として使える単発魔法も捨てがたいが、自分の特性のような扱いができる持続魔法も楽しそうだ。
「でもそんな重要な魔法、リナは一つも覚えてないのか?」
「いや、いくつか覚えてるニャ。でも先生によって教えられる持続魔法はかなり違うし、持続魔法絡みの授業はどれもこれも出るつもりでいるべきニャ」
全身複雑骨折までなら我慢して出るべきニャ、とリナは付け足す。いやいや、それでどうやって授業受けるつもりなんだよ。
ともかく、大事な授業だということは分かった。
「そんなに大事なら、確かにこの授業は大事だな」
俺は頭の悪そうな返事をした。
「そうニャ。それに、この授業では自分に合った持続魔法の判定もしてくれるニャ。判定結果は先生の専門によって大分変わってくるんニャけど、なににしても魔法初心者のコウタには良い指標になるニャ」
「まさかリナは、俺のために……!」
「か、勘違いしないでニャ! 半分は自分のためニャ!」
裏を返せば、半分は俺のためということか。
やばい、リナがさっきから可愛すぎる!
「リナはとってもメインヒロインだな!」
昨今のメインヒロインは、サブヒロインに人気を食われるのが常だけどな!
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