第7話 報酬の分配

 俺達はスライムの破片を回収してから、ギルドへと作戦の報告に向かった。

 リナが右脚を負傷した俺のために肩を貸してくれたため、街につくまではずっとリナの体温を感じることが出来た。代謝が良いのかやけに体温が高くて暑苦しかったけど、すげぇ興奮した。


 クエストの報酬を受けとるためには証拠として魔獣の核を見せなければならないそうだが、スライムは核が分かりづらいため、集めた破片の重量によって報酬が決められるらしい。

 地面や俺の体に散らばった破片の回収作業は、普通にスライムとの戦闘より時間がかかった。こんなことをするためにギルドに入ったわけじゃないのに・・・・・・!


 俺達以外の参加者はみんな撤退したため、報酬は俺たち二人の総取りとなったのだが・・・・・・。


「本当に良いのか? 俺ただの足手まといだったけど、半分も貰っちゃって」

「良いニャ良いニャ。報酬を二人で山分けできる時点で、十分に儲けもんだしニャ」


 俺達はギルドに敷設された机の上に報酬のお金を広げながら、椅子に座って話していた。

 みんなが撤退してからはリナ一人しか活躍していないというのに、リナはなんと報酬の半分は俺に分けてくれると言ってくれたのだ。


 なんて優しいんだろう! 俺はみんなが撤退してからどころかクエストが始まってから一度も活躍してないので、かなり心苦しくはあるけど・・・・・・。まぁいいか。

 無一文の俺にとっては、良心の呵責なんて些細な問題だった。


「で、コウタ。装備や動きを見る限り素人・・・・・・に見えなくもニャいけど・・・・・・。もしかしてクエストを受けるのはこれが初めてかニャ?」


 俺があまりに弱かったことに気を遣ったのか、リナが言葉を濁しながら実力を評価してくる。

 しかし実際その通りなので、俺は気にすることもなく頷いた。


「あぁ、そうなんだよ。ギルドに登録したの自体が今日初めてで、右も左も分からないニュービーなのさ。でも、どうやら君がメインヒロインのようだし、どうせ助けてくれるんだろう?」

「ニュービー? メインヒロイン? というか君、やけに偉そうだニャア・・・・・・」


 リナはこちらの世界にはない言葉よりも、俺が初対面かつ素人であるにも関わらず堂々としていることに戸惑っているようだ。


 実は俺もこのノリに関してはどうなんだろうと思っているのだけど、ラノベ主人公としては「無駄に偉そう」であることは外せないポリシーなのだ。


 いくら相手が美少女であろうと、相手が自分よりよっぽど地位が上でない限り、タメ口で接しなくてはいけない。

 それがラノベ主人公の義務……いや、もはや生態なのであった。


「まぁいいニャ。それより君、魔法学校には通ってるニャ?」

「魔法学校・・・・・・? そんなのあるの? いや、通ってないよ」


 新しい単語に意表を突かれつつも、面白そうな雰囲気を感じて気分が高まる。


「そんなのあるのって返事が返ってくるとは思わニャかったけど・・・・・・。魔法学校には入ることをおすすめするニャ。武芸の達人とかなら魔法なんて使わずに魔物と戦うぜって人もいるけど、普通は魔法がなきゃ、惰弱な人間と魔獣とでは勝負にならないからニャ。君も入るべきニャ」


 惰弱な人間って・・・・・・。


「そんな簡単に入れるものなの?」


 俺が興味をそそられて尋ねると、リナがニヤリと口の端を歪めた。そして肩まである黒髪を揺らしながら自分の鞄をゴソゴソといじりだし、中から一枚の紙を取りだした。


「この紙に名前と住所さえ記入すれば、今日にでも授業を受けられるニャ! 魔法学校はギルドが運営してるから入学金と授業料もギルド金融が貸してくれるニャ。利子は普通なら十日に一割のところを、今ならなんと―――」

「こいつ、ギルドの回し者だぁぁぁぁぁ!」


 満面の笑みで借金を勧めてくるリナを見て、俺は叫びながら彼女に背を向けて逃げ出した。しかしリナの風魔法か、俺は走れば走るほど後退していき、引き戻されてしまう。

 恐る恐るリナを見遣ると、彼女は相も変わらず満面の笑みを浮かべていた。


「さっきの報酬、やっぱり配分し直そうかニャ?」


 この物語のメインヒロインは、既に死んでしまったのだ……。

 俺はリナの差し出してきた用紙に名前を書き、家がないので住所を書く代わりにより利子の高い借金を受けた。

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