ハットエリア(10話目)

マンガの読み過ぎなんじゃないかと思う響きだが、あのドヤ顔を見ているとツッコめなくなる。というか、ツッコミたくなくなる。



2人は無言のまま森を歩み進める。

おっさんは魔法を1回も使わず、ただ僕の後を歩いている。

その間もモンスターは次々と出てくるが、数は多く、体格は大きくなってきており、倒すのに時間が掛かるようになってきた。


何十回魔法を発しただろうか、しかしそこまで疲労は感じられない。

片方の太陽が真上にあるが、木々の木陰のせいか額を走る汗はみられない。


「この辺までにしておこう」

そういうとおっさんは来た道を引き返そうとする。

あと10数メートルもすれば、木々を抜け、地面からメラメラ燃え上がる大地が見えている。


いやいやいや、火事か?

「いやおっさん多分向こう火事だぞ、どうなってんだ」

焦る僕はおっさんを追い越し、走り始める。

おっさんは歩きながら「そういうものなんだ」と全く動揺を見せない。

異世界の環境とはこういうものなのだろうか。


少し走ると足場の悪さも相まってすぐに息が上がった。

おっさんは走りはせずに、ゆっくりと歩いてきている。


「あの火のエリアはまだ早い、まだこっちの通称ハットエリアじゃないとヤられるかもしれん」


帽子?

と僕は頭に疑問を浮かばせながら、今度はおっさんの背中を追って帰路に着いた。

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