黒い炎
右手からは確かに炎が出ていた、いやともし火とでも言った方が正しいか。
一般的に火というと、赤や橙などの色のはずなのだが、僕のそれはただの黒だった。
「おいおっさん、みたか?」
信じ難い光景を目にし、一瞬脳味噌がフリーズする。視線はそのまま、腰からおっさんの方へ振り返り、その後顔を向けた。
「うおおおおおおお!」
大変興奮している様子。
しかしその視線は120度程ズレている。
つまり僕からはおっさんの背面、右側面が見える形だ。
「おい、見てろよ!!」
思わずツッコんでしまった。
これは流石に人にモノを教えるとかそういうレベルではないのは明らかだ。
その後も炎を出す練習を繰り返し、大きさはイメージよりも格段に小さいが、炎自体はほぼほぼ出せるようになった。
やはり気になるのはその色だ、メラメラしているのは炎そのものだが、なんでこんな黒いものなのか。
「おお、暗堂凄い色だな」
ようやく僕の魔法をみたようだ。
おっさんもやはりこの色が気になるらしい。
でも何故か驚いていない様子だ。
「おっさん、なんで僕の炎は黒い?」
納得のいく説明がなされることにあまり期待は出来ないが、その答えはシンプルだった。
「なんでって、お前の紋章がそういう色だからだ」
紋章…?
さっきのあの胸の模様のことか?
確かに言われてみれば同じ色かもしれない。
僕はirの後ろにあるその紋章を見比べながら、そう思った。
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