初めての魔法

僕は柄でもなく、決して純粋とは言えない瞳をキラキラさせた。

「おっさん、魔法を教えてくれ!!」


ーーーーー


外に出るとカラッと暑いのがよくわかる。

何故だかいつもより自分が色白で、空は馬鹿みたいに空色で、森の木々達も幼く見えた。


僕は魔法という言葉に胸を高揚させながら、おっさんに言われた通りにイメージを膨らませる。

身体の中の熱い魂を、右手に集中させ、それを外側に押し出す。これが僕の解釈だ。


「燃える感じだ!」

このおっさんに指導とか育成は向いていない。これが僕の解釈だ。


青い太陽が横に30度程傾いただろうか。

僕の体内時計では2限位を消化した感じだ。

未だにいつもより血管が浮き出ている右手からは汗しか出ていない。


「こぅだ!」

時折おっさんは上半身から真っ赤な炎を出して実演してくれる。

僕が右手から出そうとしているのに、まるでオーラを纏う様にするあたり、やはり向いていないと思わざるを得ない。


とにかく右手の穴から炎が吹き出るイメージを繰り返す。

息は上がっているものの、不思議と疲れはない。

というか、そもそもMP的なものはあるのだろうか。まさかもう切れているとかそういうオチもあり得る。


そんな時だった、赤ちゃんドラゴンが火を吹いたように、ミルクを飲んだ赤ん坊がゲップをするように、それは僕のイメージよりもまるでかわいい炎が出た。

喜んだのも束の間、すぐに僕の頭に疑問が浮かぶ。


(く、黒い…?)

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