異世界の決まり(5話目)

僕はこのおっさんへの落胆の気持ちを悟られないように、次の質問へと移る。

「ここが異世界なのはなんとなくわかった。現実世界というか、地球には戻れないのか?」


またもおっさんはニヤリと口角を上げた。

そして先程から開いたままの両腕をガバッと、空気に襲い掛かるように、胸の前に抱き寄せた。

「もどぅれる!」

その高らかな声の発音は、何故か僕寄りだ。


僕は目の前の光景を静かに見つめ、それには触れないように状況を飲み込む。

齢16歳、くだらん学校生活にやるせなさを感じていないと言ったら嘘になるが、これでもまだ現実を捨てていない。


「おっさん、僕、元の世界に戻りたい」

これからいくつかの困難があり、それを乗り越えなくてはならない。

直感的にそんなことを予想しつつ、それでも自分の意見をハッキリと述べた。


おっさんは今度は逆の口角を上げつつ、「いい表情だ」と顔つきを変えた。

そして僕に、この世界の事を教えてくれた。


この世界の中心を目指すこと。

中心に辿り着かなければ戻れないということ。

他にも敵がいること。

人間の敵もいること。

みんな魔法を使うということ。

僕は炎系の魔法が使えるということ。


僕はワクワクした。

自分でも顔つきが変わったのがわかる。

そう、口角が上がっていた。


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