ゲイダロゲイ

そう、それは唐突に。

僕は抱き寄せられていた。


「ちょ…」

必死に両肘を伸ばそうとするも叶わず、僕の力ではどうしても剥がせない。

そして身体の正面を中心に、生温い液体が僕を襲うのがなんとも不快だ。


「がははは、悪いな、つい嬉しくてよ」

そう言っておっさんは僕を離した。

僕を襲った前面の汗は案の定気持ち悪い。

まず、こういう時は握手じゃないのか?

いきなり抱きつくってもう完全に…


僕は嫌悪感と恐怖心を半々に抱きつつ、それでも頭を回転させ状況把握に努める。

「と、とにかく色々聞きたいことがあるんだけど」

動揺を隠し切れずに思ったよりも大きな声が出た。


「おー、なんでも聞いてくれ」

寛大なご様子のおっさんは、立派な腕を腰に当て、ドヤ顔仁王立ちで僕の視界の8割を支配する。


「まずここはどこなんだ?」

本当にわからない、だって僕は深夜にコンビニに行ったはず…


ニヤリと口角を上げたおっさんは視線を上げ、両手を開き高らかに声を上げた。

「そうだ、お前の思っている通りここは地球ではない、ここは異世界だ!!」

「俺も1年程前に来たばかりなんだが、何故か太陽が2つあってほとんどの時期は明るいままだ、まあ慣れれば眠れる様になるさ」


僕は瞳孔を細めるように目を点にして、一つの思いを胸にしまった。

(想像通りかよ…)

太陽が2つあればそりゃあ白夜じゃないけど、明るい時間が多いのは大いに想像がつく。

僕が聞きたいのはそこじゃないんだ。

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