お前の胸は何色だ

「おいっ!」

僕の脳味噌は状況を理解出来ぬまま、それでもその身に危機を覚えた。

しかし危機を覚えたといっても、その腕力には到底叶わない。


「ほう、黒か」

僕は自分の大切な部分を見られ、その上客観的に色彩を述べられた。

「バカ言うな、ピンクだ」

自分で言うのは少し恥ずかしい。

しかし黒乳首と馬鹿にされちゃあ、黙ってはいられない。


「違うわい、お前の色だよ、ほれ」

腕力から解放された僕は胸の真ん中を右人差し指で指された。

ボクサーブリーフのおっさんは左親指で胸の真ん中を指している。

僕はその指の先と先と見比べ、全く同じ形に驚く。

そして僕の胸にあるそれは、ドス黒い色をしていた。


(何だこれは…)


胸の真ん中に真っ黒い円、そして12時の方向にちょこんと棘が出ている。

変な形だ。


「しかし真っ黒なのは初めて見るがレアなのか…?お前名前は何という?」

この熱苦しいおっさんは何を言っているのか。

レアってなんだ、半ナマに焼こうとしているのだろうか。


「暗堂-あんどう-です」

乗り気じゃない僕は焦げ茶色の壁を横目に小声で答えた。

とりあえず、なんか危険な香りがするのでここから離れたい。


「そうか暗堂か!これからよろしくな」

いやいやいや…

何故か重心が前へと移動しているのがわかった。

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