第10話 mystery 10

数日前のアメリカシカゴ、今ここには神合グループ専務の神埼 理恵と、同じく常務の神埼 理菜が居た。

神埼 理恵は有理子の双子の姉、理菜は理恵の娘である。

理菜は22才、セブン・シスターズの一つでバーナード・カレッジを最高成績で卒業した事からアメリカでも多少有名人の一人でもあった。

セブン・シスターズとは、アメリカ合衆国東部にある名門女子大学7校の総称である。

今回はシカゴに有るフェアリー支店の視察、と言う名目で、その実アメリカに有るとある団体の調査に来ていた。

そして同行している者が一人居た、神合警備保証社長、神谷 龍牙、本名は大和やまと 健二けんじ。

大和家は過去の皇族で、秦氏との繋がりも深い、実は大和家が秦氏なのではないか? との噂もチラホラと有る位だ。

過去大和家と神崎家では何度も婚姻が繰り返される程両家は親密であった。

だが何故現在の大和家の頭首である健二が、偽名を使って神崎家の神合グループの一企業である神合警備保証の社長をやっているのかは謎である。

大和家も神合財閥程では無いにしろ、どちらかと言えば産業分野での一財閥を築く日本屈指の大和ダイワ財閥である。

だが大和財閥は、過去の二度にわたる大戦で、軍事産業であった為に、敗戦後財閥解体の憂き目に合っている。

よって現在はようやくグループの建て直しが成され、現在に至っているわけだ。


だがそれは表向きで、戦後GHQから隠し通した資産が数兆円有り、今も様々な軍事兵器が地下に眠って居るのではないか? と言う都市伝説も有るくらい謎の多い財閥でもある。



「やはり間違いないですね、ここにも痕跡が有ります」


「ではやはり、Imitation of Godの噂は本当だったのね?」


「はい、ロスで使われた薬物の痕跡が至るところに有りました、、、どうした?」


龍牙が突然明後日の方向に声をかけると、物陰から一人の日本人女性が現れた。


「いえ、同じ日本人かと思い、声をかけようか迷ってたんです、よろしければ今日お食事でもご一緒しませんか? これ私の電話番号です」


「そうですか、それは楽しみだ、では後程お電話させて頂きます」


龍牙は渡された紙を見ながら、、、


「救世主が戻ったそうですよ、既に御前が接触されました」


「本当⁉」


「お父様が!」


「理菜!」


「あっ! ごめんなさい…………でも…………」


「解っていますよ、戻ったら沢山甘えればいい」


「でも龍牙? 救世主は記憶が…………」


「あの人が理菜さんに抱きつかれて嫌な顔すると思いますか?」


「…………強姦するわね…………」


「それでも良いです‼」


「貴女ね…………もういいわ、好きになさい!」


「うん! お母様‼」



ーーーーーーーーー


日本、神合コーポレーション社長室


「社長、専務から視察が終わり、明日こちらに戻るとの事です、盗聴の警戒から例の事は話されませんでした、戻られてから報告するのでしょう、ただ空は曇りだと……」


「やはり、例のドラッグはシカゴでも使われたんですね…………人が神になど成れる訳が無い、なんて酷い事を……」


「ですが日本に入って来るのは時間の問題ですよ?」


「望月さん、製薬に中和剤の開発を依頼しておいて下さい、間に合わなければ…………」


「殺すしか有りませんね…………」


「…………そうはしたくは有りません」


「アメリカでは数十発の弾丸を撃ち込んだと言います、それでも生きていた、ゾンビ顔負けですね、会長には専務と理菜常務の事は?」


「まだ話して無いんです、これからImitation of Godの事も含めてお話ししてきます」


ーーーーーーーーー


会長室

俺は今下着を造っていた、家族の下着だ。

不思議だ、これも前世の記憶なのか、はたまたタイムトラベル時の残り香なのか?

俺は平面裁断から立体裁断に落とし込み服や下着を造る事が出来た、と言うよりそれが当たり前の様に出来るんだ。


立体裁断とは簡単に言うと、洋裁で人体や人台に直接布地を当てて形を定め裁断する方法だ。

ドレーピングとも言う。

立体裁断に対し、平面上で型紙から展開作成していく方法を平面製図(平面裁断)と呼ぶ。


通常平面製図から立体裁断的な服作りをするためには、とんでもない経験と技量が必要になってくる。

一般的に言うテーラリングは、基本的には全て平面製図にて型紙を作成していく訳だ、これは基本服を造る際にベースとなる型紙に使われる。


現在俺は所謂ハンカチから久美と朔耶用のショーツを造っていた。


「ちょ! 兄さん、じゃなくて会長、何やってるの⁉」


「おお、久美、お前と朔耶用のショーツを作ってる」


久美と朔耶は今日から俺の秘書として出勤してきた。


「はー…………まあ良いけど…………」


「やっぱり驚かねーな、俺はこれを作るのは初めてじゃねーみたいだな?」


「…………まあ……そうね、でも何で初めてじゃないと思ったの?」


「普通何の知識も無しにこれが出来ると思うか?」


俺は型紙を見せた


「できないわね、頭では覚えて無くても体では…………か…………」


「とりあえず出来た、履いてみてくれ!」


「ねえ、兄さん? これ作ってどうするの?」


「実はさ、地下の資料倉庫に行った時に色々な下着を目にした、フェアリーのから他社製品まで、でも満足の行く物がネーンだよ、何故か全てが不出来何だよな? クロッチの部分からステッチまでどの部分を取ってもイマイチに感じた。まあ大量生産だから仕方無いとはいえ、あれだけ不出来な物が平然と流通しているのは我満ならん、と言う事でせめて俺の女には完璧な下着を着けさせる‼」


「…………はー、、解ったわ、朔耶も呼んでくる」



ーーーーーーーーー


久美視点


また始まった…………何でこう無駄な事ばかり覚えてるのかしら?


「朔耶、会長が呼んでいるわ」


「どうしたのかしら? 今日は自室にこもるって聞いてたけど?」


「病気が始まったのよ!」


「病気?」


「ええ、下着作りの病気…………」


「え! …………」


「絶対に服まで行くわよ? 今とりあえずショーツを作ってるけど、ただ問題は魔力が復活してたら私達は良いけど有理子さん達が不味いわね…………」


「主人様が造った物を身につけないなんて姉さんが許しませんよ、成れて貰うしか有りませんね」


「そうなるわよね~、取り合えず私と朔耶の分を作ったみたいだから」


「でも現代に戻っても健兄さんの作った服や下着を身に付けられるなんて、ちょっと嬉しい」


「確かにそうだけど、エスカレートしないことを祈るだけね、またあんな恥ずかしい物作られたらたまんないわよ‼」


ーーーーーーーーー


再び健視点


「兄さん下着を作ったって本当ですか?」


「おお、朔耶も早速履いてみてくれ!」


「はい、これですね~、かわいい!」


「ハンカチ大量にさっき買ってきてな、今からブラもこれに合わせて作ってみる、今日中に家族全員の分を作る予定だ!」


「嘘⁉ そんなに一変に出来るの? てか裁断もしてないのにどうやって私達のサイズが解るのよ?」


「俺がだてに毎日お前らとやってると思って居るのか? と言うか服の上からでもけつやパイオツを人なですればサイズ位解る!」


「相変わらず無駄な才能は凄いのね…………」


そして下着を身に付ける朔耶と久美


「うん! ピッタリだな」


「いつまで撫でてるの!」


ゴキャ!


「グハ!」


「あ! 兄さん、ちょっと秘書室に忘れ物を……行って来ますね!」


「おお、解った」


ーーーーーーーーー

朔耶視点


魔力が戻ってる…………多分……前から有る健兄さんの作る下着や衣服と同じ感じがする…………


「望月課長、ちょっと良いですか?」


「木田さん? どうしたの?」


「取り合えずこちらへ」


朔耶は望月課長に下着を脱いで見せた


「健兄さんが作った下着です」


「もう始まったの?」


「魔力を確認してみて下さい!」


「……⁉ 見せて! 間違いない、魔力が前ほど強くないにしろ、戻ってる、でもまだこの程度なら見つかる程では無いわ」


「良かった…………」


「でも用心に越した事は無いわね、上手くこれを身に付けて貰う事を考えてくれる?」


「ネックレス? ですか?」


「簡単に言えば魔力を表に出さない為のアイテムよ! 押さえる事は出来ないけど外部から魔力を感じさせない事は出来るの、私達みたいにコントロール出来ないあの人には良いものよ! でもまさかこんなに早く使うとは思わなかったわね」


「でも兄さん貴金属は嫌いなんですよね…………」


「だから考えて! って言ったのよ、私だって300年もあの人の妻だったのよ? それぐらい解ってるわよ、でもこの時代で不審がられないで身に付けていられる物ってこれしか思い浮かばなかったのよ…………」


「確かに…………何とかしてみます、所でどうも兄さん有理子さん達家族全員の分を作るみたいですけど?」


「免疫の無い御前達にはきついでしょうね…………でも我満して貰うしか無いわね、出来たら私やアマリアの分も作って貰える様に頼んでみてくれる? まともなやつで」


「解りました!」


ーーーーーーーーー


再び健視点


部屋には俺が久美に呼びに行かせ、有理子と由利も来ていた。


「楽しみです、健様がランジェリーを作って下さるなんて、久美さんのもとても可愛らしい」


だが由利が意味深な目で俺の裁縫を見ていた。


「どうしたの? 由利?」


「いえ…………健様…………その縫い方、何処で覚えられたんですか?」


「ん? 何処だっけな? 忘れたな」


「本返し縫いにも似てるけど、八刺しにも似ている、多分…………手縫いではこれ程丈夫な縫い方は無い」


「どういう事? 常務」


「現存する縫い方の何れにも属さない、こんな縫い方世界中の何処にも無いって言ってるんですよ! 久美さん…………」


縫い方一つにも俺って普通じゃなかったのかよ⁉

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