第14話 ウロボロスの方がマシです!
キュカを押しのけてると、ポケットに入れてたステータスカードが落ちた。
正直見るのも辛いので今まで見た事が無かったが、拾った時、俺は驚くべきものを見た。
「な……なんじゃこりゃ————っ!」
「ご、ご主人、どうしたんだ」
「見ろよ!ほら!」
俺はステータスカードを見せながらキュカに近づく。
「職業がニートなんだが、それはなんだ」
「そこじゃねーよ! ほら!何故か全てのステータスが上がっているんだよ!」
「元はさらに低かったのか……安心しろご主人、将来は私が養って——あぁん!」
失礼な事を言うキュカを引っぱたき、俺は浮かれてナナの部屋に入る。
「おいナナ!俺のステータスカードを……どうしたんだ?」
部屋に入ると布団にくるまってガクガク震えているナナがいた。
「お兄ちゃんの股間のウロボロスを生で見てしまって軽く精神的にマジでヤバいです」
——あ。
そういえばそうだった!
股間がピサの斜塔と同じ角度で反り立っていたので鮮明に思い出した。
ステータス所じゃない! なんとかせねば!
「落ち着いて聞いてくれナナ、あれはウロボロスじゃないんだ」
「そんな事分かってますよ!ウロボロスの方がマシです!」
お、俺の股間より、ウロボロスを選ぶだなんて……!
ドMだが空気の読める変態さんは、顔を抑えて笑いを堪えるのに必死だ。
「ウロボロスはもうどうでもいいから! とりあえず俺のステータスカードを見てくれって!」
生まれたての小鹿みたいに手をぷるぷるさせながら俺のカードを受け取るナナ。
「え、なんですこれ? 今度は嘘つきニートにでもなるんですか?」
「違うって! さっき見たら、かなりステータスが上がってたんだよ」
「す、凄いじゃないですか! これなら上級の魔族でも普通に渡り合えますよ!」
「そ、そうなのか?」
嬉しくて頬が緩む。
これだよこれ!
異世界はやっぱチートに限るね!
異世界って素晴らしい!
「とりあえず。さっさと旅の準備でもしましょうよ。多分二ーファさんも起きてる頃ですし」
「そうだな、キュカは出来てるか?」
「もちろんだ」
流石は出来る変態。
変態じゃ無ければ、歳も近いし惚れていた可能性あったな。
ナナの部屋を出て二ーファの部屋に入ると、それはもうひどかった。
着たものはほっぽらかしてあり、何一つ整頓されたものが無かった。
「おい、起きろ二ーファ」
「な、なによカズト! まだ朝じゃないの!」
「もう朝だよっ! なんでこんなに散らかってるんだよ! 朝から旅に行くって昨日から言ってあるだろうが!」
「あーはいはい、旅ね。出発は明日にしましょ? あの綺麗なお姉さん達のいるお店に行くのは黙っててあげるから」
「な……………って、騙されねーぞ! さっさと準備しろ」
「かなり長く考えたわね……いつもだったら股間を盛り上げながら私に欲情してるはずなのにね」
「大丈夫だ、俺は見た目じゃなくて性格重視な男だからな。だから安心して夜は寝ていいぞ」
「よかっ……ねえ、遠回しに性格が悪いって言われた気がするんだけど?」
グチグチいいつつ手際よく荷物を整理していく二ーファ。
そういえばこいつ手が器用なんだっけ。
▽
王城を出て、俺は奮闘していた。
下級のゴブリンに。
魔族は上級、中級、下級、とレベルわけされており、ゴブリンは雑魚中の雑魚らしい。
話しによると、ゴブリンは森の精霊の死体やら、怨念やらで構成されてるらしいが詳しい事は俺は知らん。
宿を出る前は、約束された勝利のステータスだったのに、何故か下級のゴブリンに手間取っている。
「ねえ、カズト。そろそろ休憩しない?」
「そろそろお腹空きましたね」
「ゴブリンで十分とは逆にすごいな」
まだ戦ってるじゃん! ちょっと位は暖かい目で見てよっ!
「キュカ、頼む」
「あ、あぁ」
俺は諦めてキュカに倒してもらう。
十分以上かけて倒せなかったゴブリンを、キュカは三秒もかからず倒した。
「宿を出る前はあんなにステータスが高かったのに、なんでゴブリンなんか、倒せなかったんですか?」
俺は気になったのでステータスカードを見てみる。
「な、なんでだ……!?」
宿を出る前はチート並に高かったステータスが、まさかの元通りだった。
「なんでなんだ—————っ!」
クリリンを殺された悟空並に叫んだ。
なんでだ?! ステータスカードがナイアガラの滝だよ! ここまで直角下がりは初めてだよ!
「多分、隠しスキルじゃない?」
「なんだそれ?」
「一定の条件下で発動するスキルよ。カズト、あの時あなた何かした?」
「そうだな……朝起きたら素っ裸でキュカと寝てて、朝の生理現象をナナに見られた位かな」
「……次の街に言ったら自首しましょ?」
「違うって! 素っ裸で寝てたのはキュカのせいだし、ナナは勝手に俺の部屋に来ただけだからな?!」
「お兄ちゃん! その話しはやめてください!」
「そうだぞご主人、二人っきりの秘め事を他人に話すのはあまり興奮しないぞ」
ナナはともかく、ド変態が場を濁すので大人しく昼食を取る。
毎回お馴染みの、『ヌーバ』だ。
何度も食べてると、腹が痛くなりそうな感じがする。
次の街までは王城から二日ほど歩く必要があるので、少なくとも一回は野宿する必要がある。
魔物を避けたり、狩ったりしながら進んでいる内に空はすっかり、暗くなっていた。
皆より、圧倒的に弱い俺はほとんど戦ってないので、見張りをしてる。
特にこれといったアクシデントも無く、朝を迎えた。
この日も特に何もアクシデントがなく、サクサク進めたので日が落ちる前に次の街に付いた。
「ティンジェルって街みたいだな」
「ティンジェルは国で一番人口の多い街らしいぞ。治安も良く、店も盛んだ」
話していると後ろから馬の走る音がした。
「ん?ホモの兄ちゃんじゃねえか」
「あっ! お前はあの時のホモじゃねえかよ!」
目を合わせるなり声を揃えて言う。
「「ん?」」
「「俺はホモじゃねえぞ?」」
見事なまでのシンクロ率だ。
あまりの衝撃に俺は、
「いやいや、あの時穴を掘るとか、一人で掘るとか言ってたじゃねえか」
「バカ言うなよ? 俺は女子風呂までの穴を掘っていたんだよ。途中でやらかしちまって失敗したがな。そういうお前こそホモだろ、女子に興味がないっていうのはそういう事だろ」
「いやいや、違うって。興味ありありだわ」
後ろから冷たい目線が2本ほど刺さってるような気がするが気にしない。
「そっかそっか、お互い早とちりだったわけだ。おっと自己紹介が遅れたな、俺は山下透だ」
ん?
こいつ日本人か?
「お前って転生者……なのか?」
「おっ? お前も転生者なのか?」
「そ、そうだぞ。ちなみに俺は真鍋一隼だ」
「そうか、よろしくなカズト」
「あぁ」
俺は透と握手をした。
「ねえカズト、早く入りましょうよ」
「そっちの三人は仲間か?」
「そうだけど」
「そっかそっか!じゃあ俺は用事があるので先に入るぜ〜。また会ったらいい店でも紹介してやるよ! じゃあな!」
透は再度馬車に乗ると、すぐに行ってしまう。
「それにしてもすごい人だったな。軽く犯罪な事を忘れるくらいだった気がするぞ」
「そうね、ガチ犯罪者のニートと同レベルな頭をしてそうだけどね」
悪態をつく二ーファを無視して、俺たち四人は『ティンジェル』へと、入っていった。
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