第13話 俺の脳内はすでにキャパオーバーだ
「ニートが奴隷に手を出すなんて最低ね、もしかしてニートって奴隷より下の身分なのかしら」
「そうですね、軽く首を一回転させたくなりました」
食事中なのにえげつない事を言う二人。
あと首は一回転する前に死んじゃうから。それじゃオーバーキルだからね。
「確かに俺が悪かった部分もあるけど、一番悪いのはキュカじゃないか?」
「確かにその通りだ、全ての諸悪は私にある。だから私を攻めろっ!」
食事中なのにキリストみたいなポーズをするキュカ。
ここまでくるとドMの始祖かと思ってしまう。
「ナナちゃん今の聞いた?悪い事は全部奴隷に押し付けるクズニートの鑑よ」
「そうですね、餓死すればいいのかなって思います」
もう勘弁して欲しい。
悪いのは全部、神様のせいにしよう。 うん。そうしよう。
余談だけど、食事から戻る途中にパンパンに頬を膨らませて怒るナナのほっぺたをつついてイタズラしたら、指がもげるくらい噛みつかれました。
あれから一旦、宿に戻り各自温泉に行ったら厄介な奴が現れた。
「お?ホモの兄ちゃんじゃねえか、また会うとは奇遇だな」
「なんでまたいるんだよ、というかホモはお前だろうが」
先日の、穴掘りの男がいた。
何故かあの後、俺がホモと言われたのが腑に落ちないが、深く関わるとヤバイ事になりそうだ。
俺が無視して風呂に行こうとすると、俺の質問に答えるようにその男は言った。
「今日はな、一人で掘ろうと思ってだな」
——俺は戦慄した
一人で掘る? 何を言ってるんだ? 一人でホール役と掘る役を演じるのか? 馬鹿な事言うなよ? 駄洒落にもならないから。
悲しいのか汚いのかよくわからない感情が込み上げて来そうだったので、俺は無視することにした。
まだ何か語ってるみたいだが、俺の脳内はすでにキャパオーバーだ。
大人しくリングアウトさせてもらう。
振り返ると男はどこかに行ってしまったのか既にいなくなっていた。
温泉から上がり少し待っても三人が来ないので、先に部屋に戻るカズト。
部屋に着くとどうやら三人とも自分より早かったらしい。
「あら、ニート教の開祖様がお戻りになられたわよ」
「あまりの神々しさに目が発酵しそうです」
戻ると、俺の部屋で三人共待ってくれたのは嬉しいが、夕方のキュカの勘違いからか、どうにも虫の居所が悪いらしい、二ーファとナナ。
なんで俺が開祖なんだよ……もっと偉大なニートとかいるでしょ?
「なんでご主人が責められているんだ? ここは奴隷である私にくるべきじゃないか?」
「キュカは黙っていろ、頼むから大人しくしといてくれ」
キュカがハァハァと、息遣いが荒いが放置しておこう。
「なぁ、二人とも、あれは誤解なんだって。キュカが勝手に入ってきただけなんだよ」
「それはキュカちゃんから聞いてるから分かってるわ」
「え、じゃあなんで——」
「ただの暇つぶしよ?」
「よし、二ーファ、お前だけは許さん。 所でナナも知ってたのか?」
「さっき温泉で知りましたよ。だけどそれとこれとは話しが別ですね」
ナナは本気で怒っていたようなので、俺は無駄な動作無く、土下座をした。
その時の土下座は、国宝級の土下座じゃないかと自負している。
俺は謝罪も、言い訳も無く、土下座のままでいると、
「まあ、反省しているならいいですよ、明日から西に向かうわけですしパーティー内でもめてる場合じゃないですしね。次は気をつけて下さいね?」
言い終わると二人とも部屋から出ていく。
俺は土下座の状態から羽化するように、ゆっくりと背筋を伸ばし天を仰いだ。
——幼女は雷だが、時に幼女は神なり
さて、本日の格言も呟いたし寝るか。
布団に入ると違和感があった。
下着姿のキュカがいた。
いや、いつ脱いだんだよ。
「なんでまたいるんだよ」
「奴隷として、ご主人のベッドを温めるのは当たり前じゃないか?」
「当たり前なわけないだろう」
「ふふふ、ご主人は転生者だと聞いたぞ」
「だからなんだよ」
「だったら、寝ながらでいいからご主人の世界の話しを聞かせてくれないか?」
「まぁ、いいけどさ——」
そこから一時間程、うつらうつら話している内に寝落ちしてしまった。
▽
「ほわゎゎゎゎ……!」
寝ていると、扉の辺りから可愛らしい変な声が聞こえた。
「ほわゎゎゎゎゎゎゎ……!」
寝起きで意識が覚醒仕切って無いので、誰だか分からないが、声だけを残して扉を閉めて出ていったようだ。
眠い目を擦って起きると、俺は全裸だった。
「は?」
隣には下着姿のキュカが寝ている。
しかもお互いに抱き合って。
「は?」
これじゃ、完全に朝チュンじゃないですか。
あっれ〜?昨日は俺の世界の話しをして寝落ちした記憶はあるんだけど、そこから覚えておらぬ。
——廊下に足音がするっ!
とりあえずキュカから離れ、布団で隠す。
「お兄ちゃん!おは——」
ナナが勢いよく入ってきたと思えば俺の全裸を見ると、時間が巻き戻るかのように扉を閉めた。
幼女に男子特有の朝の生理現象を見せるなんて地球だと、軽く無期懲役レベル。
抜いてくれと言わんばかりのエクスカリバーを見せてしまった所でキュカが起きた。
「んぅ〜……おはようカズト、なんだ?立派に立ったものを見せつけておいて、抜いてほしいのか?」
見慣れているのかキュカは動じない。
抜くって引っこ抜くの方か? 俺が想像する抜くなのか?
「いや、いい」
「抜くといっても気持ちよくさせる方だぞ?」
「ふっ、俺は理性が保てる男なのさ。だから目の前の快楽に溺れるなんて言語道断なんだよっ!」
異世界に来てから不幸続きの俺は悩んだ挙句、否定をしておいた。
ここで頷くとで痛い目にあうかもしれないからな。
俺の力説を聞いたキュカは「そうか」と俺を無視し着替える。
「そういえばなんで俺は裸だったんだ?」
「ご主人が寝言で暑い暑いうるさいから脱がせてやった——ちょ、ご主人!朝から激しいっ」
「やっぱお前か!なんて事してくれてんだ!」
俺はキュカの顔を片手でアイアンクローをする。
「だってご主人が暑い暑い言ってるから……ハァハァ」
「お前がどけばいいだけじゃねえか!」
「それはだめだ! 私の存在意義が無くなってしまうからな!」
「お前の存在意義はベッドの上ではねえよ!」
「なっ……!私の存在意義はすでにベッドの上ではご主人が主導権を握っているのか」
度し難いドMはもう放置だ……
医者の手の施しようがないって、言う気持ちが少しは分かった気がする。
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