第7話『ファーストステージ』その3

###第7話:ファーストステージその3



 そのプレイを見た者は、別の意味でも衝撃を受けることとなった。中継映像を見ていたギャラリーも、これには言葉を失っている。

他のプレイヤーでは批評家気取りのギャラリーもいたと言うのに――まるで180度態度が変化したとも言える光景だった。

「成程――そう言う事なのね」

 外見は若干ぽっちゃり――そんな女性が、冷静にこの人物のプレイ動画を分析しているようでもあった。

SFベースのインナースーツに、ARメットも似たような意匠を持っている。それを踏まえると――彼女も同じようにプレイヤーである可能性が高い。

それ以上に特徴的なのは――白銀の大型ガントレットにも似たようなARガジェットだった。

「これは、確かめなくては――」

 体格としては女性に見えるが、ボイスチェンジャーが使われているようで――そうは聞こえない。

だからと言って男性ボイスではなく、加工ボイスなのだが――色々と癖がある。

「あの人物は――」

 別のゲームを終えてセンターモニター付近に姿を見せたのは、メガネに知的――そう思わせるような女性である。

ただし、ARインナースーツを着用しているので――周囲からすればギャップ萌えだろうか。体格もアスリート系だし、身長も170には満たない。

彼女の正体、それはゲーマーとしても知名度を持つ霧島(きりしま)である。猫耳の付いたフルフェイスARメットが特徴的だが、それはゲーム中以外では被らない。

「ファンタジートランスには、あまりロケテ以降は興味が――と思ったけど」

 霧島も実は過去にロケテスト経験者である。それに加えて、前作や一連のシリーズもプレイ済――経験者と言えるだろうか。

ARゲームの場合、経験者でも前作プレイ済みでも新作となると勢いが落ちると言う都市伝説がある。一体、どういう事なのかは不明だ。

【一体、どういう事だ?】

【ファンタジートランスで判定が変更されたという修正項目はなかったが――】

【判定変更のアイテムとか使ったのでは?】

【アイテムが使えるリズムゲームも、あるにはあるだろう。しかし、これはARゲームだぞ?】

【だからこそだ。ARガジェットやアプリ、更には特殊なパーツ等――効果がありそうな物は、探せばいくらでも出てくる】

 ネット上にある掲示板の実況スレでは、様々なプレイヤーが驚きを見せているようでもあった。

中にはARゲームに興味のないような人物も、スレをのぞいている可能性は高いのだが――。



 周囲を驚かせたプレイ動画――誰のプレイだったのか? プレイしていた人物、それは予想外の人物だった。

「この感触は――?」

 そのプレイを偶然にも披露し、周囲を驚かせた人物の正体――それは何とアルストロメリアである。

手に汗が――と言う様な状態に加えて、このプレイに関しては自分でも実感が沸かない。

明らかに、自分の動きが自分ではないような――シンクロ具合があったのかもしれないのは間違いないだろう。

周囲のギャラリーが歓声を上げているのは、自分のプレイではないと言う可能性も彼女は考えていたが――それも違った。

この歓声は間違いなく自分に向けられた物だったのである。そして、アルストロメリアはリザルトを見ると――自分でも予想できないスコアを記録していた。

《パーフェクトスコア》

 まさかの初見パーフェクトである。どうやったら、初見の譜面でパーフェクトが出せるのか――聞きたいのはギャラリーの方だろう。

アルストロメリアも、混乱をしているようで――何をどうやったのかも覚えていない。

ARゲームでは過度なシンクロプレイを行うプレイヤーもいると言う話があるし、都市伝説でもプレイ中の内容を動画を見て気付くプレイヤーの事例もある。

つまり、アルストロメリアもシンクロするプレイヤーだと言う事なのだろうか? このプレイにはプレイを見ていたギャラリーやプロゲーマー等も驚いた。

「えっ? パーフェクトって――あのパーフェクトなの?」

 いまだに手は震えており、通常以上に興奮しているのは明白だが――彼女には自覚がない。

パーフェクトと言われてもファンタジートランスでは判定の緩和なども行われている可能性もあり、別のリズムゲームにおける同類プレイとも考えられなかった。

《ステージクリア》

 周囲の光景を確認する事もなく、アルストロメリアは次の矢印に表示されたルートで次のエリアへと進む。

しかし、この先は探索エリアの為、矢印通りに誘導されるのは――わずかなエリアに限られるが。

【パーフェクトか――】

【レベル1譜面ならば、パーフェクトの事例は少ない訳ではないし――驚く事ではないだろう?】

【確かにレベル1なら2割のプレイヤーが、簡単にパーフェクトを取っている楽曲だってある】

【驚くのはそこではない。むしろ、これが初プレイだとしたら?】

【それこそ――!?】

【その通りだ。彼女は初見プレイでパーフェクトを達成したのだ】

【ARリズムゲームの――それも新作で初見パーフェクトなんて、チートじゃないのか?】

【ARゲームにチートと言う概念はない。容易にチートと言う言葉を出せばネットが炎上すると考える――ネット炎上者のやりそうなことだ】

 実況スレでも、アルストロメリアのプレイに関して言及する人物はいた。

しかし、それがアルストロメリアと言う人物が達成した事には触れていない。おそらくは、広範囲にネット炎上を行おうと言う意図もあるのだろうか?


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