第6話『チュートリアル』

###第6話:チュートリアル



 アルストロメリアは――無事ログインをする事に成功した。ここで失敗したら、プレイ出来ずに帰る所だったから。

「これが、ゲームフィールド――」

 アルストロメリアは周囲を見回すが、あの時のように見えてはいけないようなシーンは表示されない。

どうやら、今度は正常に動いているようだ。それに加えて、ガジェットのチェックではチート認定をされていないのも大きいだろう。

さすがに運営から手渡されたガジェットでチートがあったとしたら、一大事かもしれない。

《これよりチュートリアルモードに移行します》

 ARメットのバイザー部分にはメッセージが表示され、そこにはチュートリアルモードの解説があった。

チュートリアルのキャンセルは任意で可能だろうが、これはあくまでもARゲームである。面倒だったとしても一通りのチェックは必要だろう。

《チュートリアル中はプレイ時間は消費しません。チュートリアルをプレイしますか?》

 選択肢には『YES』と『NO』の2つがある。ARバイザーに表示されているが、選択肢を選ぶのはガジェットに表示された選択肢にタッチしなければいけない。

自分の場合は選択の余地もなく『YES』になるだろうが――。

《チュートリアルを開始します》

 そして、チュートリアルが始まる。ストーリー説明の様な物は行われないが、リズムゲームでストーリーを重視している作品は数えるほどだ。

それこそ――世界観がないに等しいリズムゲームだって存在するだろう。ストーリーをプレイヤーが重視しない傾向なのは――リズムゲームの宿命かもしれない。



 チュートリアルモードを一通りプレイし、10分は経過しただろうか?

分かった事は、ボスエリアまでは探索フィールド扱いでFPS要素が絡む事、ボスエリアではリズムゲームパートが入る事が言及された。

前作だと敵とのエンカウントでリズムゲームパートへ突入するモードとボスラッシュ的なモードで別れている。今作はそれを簡略化したという事か?

どちらにしても、エンカウントする度にリズムゲームパートをやらされるのは作業以前の話になるだろう。

エンカウントと言っても、敵に発見されたりしなければ良い話と言うか――そんな感じだ。前作はFPSと言うよりはハンティングゲーム的な要素もあったかもしれない。

「制限時間は30分――チュートリアルはカウントなしとして、先へ急ぐべきなのか」

 ARバイザーにマップを表示させ、次の目的地へと向かおうとするアルストロメリアだったが――制限時間が追加されたのは大きいかもしれない。

別シリーズではゲージ1本がゼロになったらゲームオーバーと言う物もあった。しかし、リズムゲームは他のジャンルと違ってテクニックが必要と言われている。

その為か、ゲージ1本でゲームオーバーとなると満足に楽しめないと言う意見もあったかもしれない。それを踏まえての、制限時間だろうか。

制限時間内であれば、何度でも復活できるのも――途中離脱等が出来ないと不便だ――という意見が出る可能性は否定できない。

しかし、それを考慮するかのようにログアウト機能があるようだが、自分は特に使わないだろう。開始3分以下でのログアウト不能と言うのもあるし――緊急事態をのぞいて。

「リズムゲームパートがボスエリアまでない以上は、先を急ぐのが優先――だろうか」

 アルストロメリアは周囲を見回すのだが、特にライバルと言えるような人物は見当たらない。

プレイヤーが数十人規模でログインしているのは分かる一方で、パーティープレイをしている様子もあった。

リズムゲームはソロプレイが基本で、それ以外はネットワークを通しての通信対戦がメインである。それを対戦格闘ゲームでやると、ラグが激しいという話は聞く。

考えてみると、ARゲームは大容量のデータをやりとりするはずなので――通信ラグは致命傷のはず。それは前作をプレイしていた時も感じたことだ。

「そう言えば――」

 アルストロメリアは、矢印マークが表示されたルートを進んでいく中で――明らかに重武装なアーマーを装着したプレイヤーを発見する。

ARバイザーで顔が隠れているので表情は確認出来ないが、あの重量だと疲労は半端ではないだろう。他のプレイヤーも心配そうに見ているほどだ。

アーマーに分かりやすそうな名前が書かれていれば――と思ったが、それは不可能だろう。プレイヤーネームを調べようとサーチしようとした頃には、既に姿を消していたのである。

「まずは、城の入り口に似た場所へ向かうのが――」

 どう考えても、周囲の背景とは明らかにギャップが激しいようなエリアの入り口が見え始めていた。

矢印はここへ入るように指示しているので、間違いなくエリア1だと思うのだが――。

(本当に、リズムゲーム要素はあるのだろうか?)

 入口の周囲にトラップがあるか調べるのと同時に、そんな事を思っていた。

シューティング要素やレーシング要素のありそうなリズムゲームは過去にも存在していたが、ファンタジーアクションの世界観でリズムゲームなんて聞いた事がない。

いくらなんでも――無茶過ぎるかもしれない。周囲のプレイヤーも、そう思っているのがほとんどなのでは――。



 アルストロメリアの様子を遠くから見ていたのは、先ほどの重装甲アーマーのプレイヤーを追尾していた別人だった。

「ちっ、逃げ足だけは速いと言うべきか」

 重装甲アーマーのプレイヤーを逃がした事に関しては舌打ちをしていたが、それとは別にアルストロメリアを発見した事には驚いていた。

『あの人物は――噂に聞くシナリオブレイカーか?』

『まさか、彼女までエントリーしていたとは』

 別のプレイヤーが、シナリオブレイカーと呼ばれた人物を見て即座にその場を離れる。

他にも似たような行動をする人物はいたのだが、それを追いかけようとする様子はなかった。

「このロングソードを含めて、ガジェットの性能を試すには――」

 1メートルにも及ぶ長さのロングソードを振り回しながら、彼女は何かを考えている。

フルフェイス型のARバイザーを装備している訳ではないので、表情を知ることは可能だろう。しかし、目はバイザーで隠されており――。

ガジェットに関しては、他のプレイヤーと同じくバックパックを使用するタイプであり、アルストロメリアも使用している。

しかし、形状は若干アレンジされている事に加え、彼女の使うロングソードは明らかにビームブレード系に複数の武器を合体させたような――デザインをしていた。

「どちらにしても、あの重装甲アーマーが――例のプレイヤーとも限らないし。今は泳がせておきましょ」

 彼女は若干軽いというか――逃げたプレイヤーを追うのは中止し、アルストロメリアの方を尾行しようと考えている。

しかし、彼女のプレイデータをチェックした彼女は驚くしかなかった。そのプレイデータは――。

「前作経験者か――まずは、様子を見るべきね」

 表情が若干変化したが、目の表情はバイザーの影響で確認しづらいだろう。

しかし、シナリオブレイカーがアルストロメリアをターゲットに選んだのは間違いない。

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