第3話『プロゲーマー』

##第3話:プロゲーマー



 3月1日、一部のアンテナショップでは『ファンタジートランス』の正式稼働準備が始まっていた。

準備と言っても開店前に行うので、大抵の店舗では午前10時~午前11時位にはプレイが可能になっているだろう。

しかし、正式稼働したからと言ってすぐにプレイできる訳ではないのはARゲームプレイヤーであれば誰もが知っている。

「ゲームが実際にプレイ可能となるのは、まだ時間がかかるか」

「先にデータの更新をしておくか――」

 一部のプレイヤーは継続に該当する為、先にセンターモニターや受付窓口でデータの更新を行う。

これによってスムーズにファンタジートランスをプレイ出来るようになる。

基本的に旧シリーズから新シリーズと言う続編関係やアップデート系は、一度でもアンテナショップかセンターモニターでデータを更新を行う必要性があった。

それを行わずにプレイしようとすると、データエラーを起こす。この辺りはアーケードゲームの続編が出た際のアップデートとは異なるだろうか。

この手続きは前作データがない場合には必要がなく、その際はゲームプレイ時にアプリダウンロードと共にプレイデータが作成される。

ARアーマーに関しては、このプレイデータがなければ生成が出来ないのだ。

この手続きを忘れて、実機でデータ更新が出来ると考えてしまうと――大変な事になるだろう。



 同日、草加市にあるオケアノス、その中でも一番目立つ建造物と言えば――草加ARゲームマルチフィールドである。

そこでは既に先行稼働がされていたので――手っ取り早くファンタジートランスがプレイ出来るのは、ここと考えたプレイヤーで混雑していた。

既に整理券がARガジェット経由のデジタルタイプが配布され、ランダムで番号が呼ばれるとプレイ出来る――という仕組み。

 プレイに使用するフィールドの広さもあって、2つのフィールドが使えない。ある意味でも悩ましい仕様を持つ。

ただし、フィールド内は数名しかログインできないと言う訳ではなく、100人位は同時ログインが出来るだろう――と思われる。

「ゲームがプレイ出来るようになるまで、更新作業でも――って思ったけど、先行稼働で更新しているからOKなのね」

 整理券発行をしようとセンターモニターの前まで来た一人の女性、彼女は眼を隠すように深く帽子を被っており、外見はスマートだろう。

その一方で、胸は揺れないが90位はあるかもしれない。それを目撃したギャラリーは、若干動揺をし始めていた。

長身のプロゲーマーと言えば、複数名存在するが――リズムゲームでのプロゲーマーと言うと更に絞り込める――それこそ、指折り数える程度。

彼女の場合は長身と言っても175あるかどうかなので、この事例に該当するかと言われると微妙なラインだが。

「あいつは――まさか?」

「プロゲーマーがARゲームにも来たと言うのか?」

「ARゲームにメーカー公認プロゲーマーがいるわけがない。彼らは、あくまでも個人単位のプロゲーマーだ」

「それでも自称ではないプロゲーマーだろう? 実力差が大変な事にならないのか?」

「ソレは問題ない。マッチングではプロゲーマーの称号を持っているかどうかで変化するゲームもある位だ」

 周囲が動揺する理由は、ただ一つしかない。彼女が実はプロゲーマーであることだ。

これに関しては彼女も隠すつもりはないのだが――場所が場所だけにトラブルが起こるのは回避したい。下手をすれば、出入り禁止は回避出来ないから。

《整理券を発行しました。番号を確認の上でお待ちください》

 センターモニターでは、彼女の整理券を発行したというアナウンス表示があるのだが――そこに書かれていた名前を見て驚愕するプレイヤーが数名、言葉を失う物も何人かいる。

(馬鹿な――彼女が来ているのか?)

 彼女の次に整理券を発行しようとしたプレイヤーは、別の意味でも危険な人物を発見したと思った。

「ちょっと待ってくれ――彼女が、ここをメインフィールドにしていたなんて」

 別の男性プレイヤーも言葉を失いかけていた。そこに表示されていた名前は、騙りでもなければ同じHNの別人でもない。

正真正銘の本物と言える人物だったのである。これには、他の別ゲームで待機していたプロゲーマーの面々も――驚いている所から、衝撃度合いが分かるだろうか。

「本当は黙っているつもりだったけど――その通りよ。私の名前は――ビスマルク。プロゲーマーのビスマルクよ――」

 帽子に付けられたピンバッジの『Bis』という特徴的なワンポイントもあるが、彼女の場合は別格とも言えるカリスマを持っていた。

同姓同名は何人かいるかもしれないが、彼女は間違いなくプロゲーマーの一人であるビスマルクだった。

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