エピローグ

エピローグ -Zのひとつ後-

 俺はいつだって友達に囲まれていた。だけど誰ともそれ以上になれない。友達以上何かになれないし自分からは望まなかった。自分でも最低な生き方と自覚していたけれど、俺はそんな人生で満足だった。


 誰かを愛する必要なんてないと思っていた。

 愛の形なんてよくわからなかったからだ。



 不特定多数に笑顔を振りまいて生きていくのは苦にならない。弟は寂しい人生だねって言ったあの人がすごく憎かったらしい。君の事が好きだったのに。それなのに、俺の居場所はあってないようなもの。そう言って酷く傷ついたようだ。


 そして、あれから二年たつ。あの人と同じように弟に好意を寄せていた品川が、弟に嘘を吐いたあの時から早くも二年になる。あの人にフラれてから、人を愛したり信じたりすることはしなくなった弟の話。


 いつかはバレる嘘だけど、バレたときにはお互いに明確な違いが出ていれば、きっと未来は明るいはず。品川の隣で、品川に罪滅ぼしじみた執着を見せる弟を見ていれば自然とそう願ってしまう。


 弟の心の鍵は開いた変わりに、今度は俺が心に鍵をした。けれどそれは苦痛じゃない。唯一、俺と弟を隔てる壁。品川の作ってくれた城壁だ。

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