・第百話「逆襲物語ネイキッド・ブレイド(決着編)」
・第百話「逆襲物語ネイキッド・ブレイド(決着編)」
激烈極まりない死闘に必要のない感覚が削ぎ落とされ、長い長い主観的認識時間が逆に圧縮され、全てが白黒静止画の断続と響き合う音楽のように抽象化される程に続いたそれは、しかし、終わる時が来ようとしていた。
「らぁああああああああああああああっ!!」
ルルヤが吼える。前後左右の空間と時間と次元から無数に襲いかかる『
残るは一時は星を覆う程に巨大化した本体のみ。今は【融合巨躯】より少し大きい程度の大きさになったのは、最早互いに超絶の力を得ての束ねた全てのぶつけ合いであるこの戦いにおいて過剰なサイズ差は無意味故か。
その『
「ハッ……どうした! その程度かぁああっ!!」
「ッ……くああああっ!?」
その剣を投擲! 反らしきれず腕を抉られる【融合巨躯】! ルルヤの苦悶! 全身から合計十二の光の翼めいたエネルギーを噴射し突貫する『
SWASH!
「「何の……!!」」
剣劇! リアラとルルヤの声が入り交じった反骨宣言! 【融合巨躯】の手にもまた、光と闇の入り交じった一振りの剣! 受け止め、斬り合う!
斬り結ぶ! 斬り結ぶ! その剣は、今のリアラとルルヤだからこそ辛うじて受け止めきる事ができているだけで、本質的には滅びそのものだ。流石にそこまでは守る訳にも行かない既に滅んだ後の世界や生命の存在しない世界が一振りで砕け散る!
JYAOOOOOOO!
世界と世界の狭間の空間ですら、削り取られ消滅する。まるで紙が破れたような音を立てて。いや、あるいは実際に、世界という名の物語を書いた紙を裂いて物語を破壊していると錯覚するような超自然的恐怖を煽る感覚のそれは具現。
「それでも僕達は!
横溢する死、滅び、消滅の中、リアラは逆襲の心を歌う。抗うという宣言のまま。それは
罪悪感を抱えた救済なんて無限の責め苦だ、命は救済を欲するものだと言っても、他者を踏みにじっての救済なんて真っ平御免だし、そう思う心を消してしまったら自分では無くなってしまうのと同じ事だと。
「人間はそんな生き物ではない! 少数者め!」
『
「地球で! 貴様等が! 貴様等の仲間が! 少数者である事を忘れたかッ! 」
奇怪な剣を構え体当たりめいて突撃を繰り返し、受け太刀した【融合巨躯】に受け太刀越しに波動を飛ばして傷を入れながら、剣を掴んでいない方の手で掴み掛かり、掴んだ部分の物体を分解し振り払われるまでダメージを更に与え、それは人ではないと吠える。
人は、今はまだ現実ではない明日を想像する頭脳を得た結果、知恵という最強最悪の毒牙を得て、代価として明日の果てである死を知った。
人は、地球には実在しない神々という物語を夢想し死の恐怖を一時的に克服したから文明と言える巨大な群れを構築する事が出来た癖に、より良い明日という物語を信じて幸せを得る為に自分で神秘という物語を殺して死への恐怖を甦らせた。
人は、21世紀になっても尚奪い合い資源を使い尽くして滅びるが先か新技術を発展させるのが先かというチキンレースを時の果てに滅びる事が確定した宇宙の上で繰り広げている。
人は、人類文明がどうなろうが自分は死ぬし文明の進歩で万が一寿命が延びても宇宙の滅びを越えるには更なる奇跡が必要だという事を日々必死に意識の外に追いやる矛盾した、あるいはそれにすら気づかない愚鈍な、半端な存在。
昨日と同じ今日、今日と同じ明日が続き、幸せに暮らしましたとさという、最も些細な童話の一行めいた平穏さえ、何時か明日が終わるが故に絶対叶える事の出来ない哀れで儚い生き物。
「人間を愛する神様がいるなんて私『
「よくもまあ、全てをそこまで冒涜出来る……!」
地球人も、地球の宗教も哲学も思想も文明も科学も社会も政治も全てを冒涜して恥じぬ『
「それが人だ! 私はそんな人間の産み出した結果だよ! 都合のいい物語がぁっ!」
「ハ、貴様が言うか!?」
そのルルヤに『
「だからこそだ、同類……リアラのヒロインがぁっ!」
再度、激しく剣戟。その狭間、舌鋒もぶつかり合い火花を散らす。貴様はリアラの救い、甘やかしだ、貴様も私が罪悪なら同様だという『
「支え救い救われる事は、人と人との関係として何も問題は無い、私とルルヤは、支えあっただけだ!」
「ご都合主義だっ!」
恋愛も! 救済も! 全ては欲望だと、それをそこまで綺麗に満たすお前は私達と同じご都合主義だと、『
「ご都合主義、か。都合の悪い物語など、大半は『
自分を貶めようと放った『
「だが確かに、私たちは限りなく近い。本質的には同じものだ。異世界転生とて、本来は悪いものでは無かったのに……しかし、それを憎悪の対象にしてしまったのは異世界転生そのものだ」
その表情とその言葉は静かだった。地球で物語を知り更に成長したその心は、今や『
「何、だと!? 何を言う! 私の何処が間違っている! 違うなら貴様等が衆生共全てに今すぐ救いか悟りを授けて見せろ! 私は出来るぞ! 地球の愚民共全てを救ってやる! 何故阻止する! 貴様らの復讐への我執だろうそれは! この、
『
「
糾弾を、しかしリアラは臆さず受け止める。自らの穢れを知り尚進む事を止めない、己が全知全能ではない事を知る者であるが故に。
「僕達が救えない部分は、僕達の仲間や、僕達に影響を受けた誰かや、僕らとはまた違う物語の誰かが救うと信じている!」
そして己以外の物語を知り、肯定する存在であるが故に! 自己の限界を知り尚理想を尊ぶ事、他者の善を知り尚尊ぶ事、そのどちらも、唯我独尊の神たる『
「無論、私もルルヤを補おう。そして言おう。
「む、無茶苦茶な事を! それは依怙贔屓……!?」
「物語も人を必要としている、人も物語を必要としている、そういう事だ! 無論そうでないものもあるだろうが、お前達が異世界転生にしてしまったというのはそこだ! 物語にも人にも人と物語と現実の関係にも様々な形がある、お前達はそれを踏みにじり、押し流した。異世界転生以外を虐げ、異世界転生の中ですら、序列を作り強弱を作り過剰競争を起こして過激に走らせた!」
「独善を……!」
ルルヤの言葉に『
「無論、僕達が尊ぶような物語のあり方もまた本来は全体の一部!」
独善はどちらもだという反論をしようとした『
「僕達は少数者だし、理想は儚い。人の心の中には確かに言い訳しようもない程邪悪が中心に座っている! 怒り、憎しみ、恨み、鈍い! 人の命の中心にもどうしようもない程苦しみが詰まっている! 傷つき病み死ぬ! それがホモ・サピエンスって生き物だ! だけど! この憎悪と恐怖と苦痛と欲望の詰まった肉の袋は……それでも神様や正義や人道や優しい世界を夢見る! それもまた、人間なんだ!」
人は、それでも物語を必要としているし、欲しているし、物語を作ることが出来るし、それに殉じる事も出来る。そうではないという人間も、無意識に社会や良識や道徳や常識や歴史といった、当人が物語ではなく現実だと思っている物語を必要としているし、社会を通じて物語を必要だとする人間と支えあっている。
「本気で殉じられる人間が少数だとしても……それは必然だしそれでいいと思う。誰もが物語を書いていたら読む時間が少ない奴ばかりになるし……同じように誰もがこんな風に実際に異世界で戦いなんて繰り広げていたら、漫画もアニメも見る暇も無い……すっかりファンタジー世界の住人になっちゃったから、生前はSFも好きだったのに、今じゃSFみたいなメカとは戦う以外の事が出来やしない」
苦笑するリアラ、リアラの表情を写す【融合巨躯】。地球に一瞬帰って、久々に見た地球の漫画やアニメ。やっぱり、大好きだった。泣きたくなるくらい懐かしかった。ルルヤさんや沢山の人に出会えた事、救えた事、勿論かけがえの無い大切事だけど、それで無くしたものがあるのもまた事実で、どちらも大切なものだった。
有限の人生、何かを得る事は何かを無くす事。自分にとって大事なものの割合を出来るだけ増やしていければと思うが、だからといってその過程で無くす物が無価値な訳じゃないと違いを肯定する。
「『
僕にだって。そう声無く語り胸を押さえるルルヤの傍らにリアラがすっくと立ち、それでいてがんしゅうの笑みを浮かべてその胸に当てた手を取った。背筋を伸ばして、全てを胸張って受け止めているが、張った胸の中にそういう要素が、私だって無いわけじゃないさと、
「僕は僕自身悟っちゃいないし、誰もが悟れると思いもしない。だけど『
衆生全てに悟りを授けて見せる事は出来ないけれど。自分自身悟れはしないし救われる事も難しいけれど。
「それでも、何度でも言うし、自分自身が完全にそれに合一出来なくても、努めて信じる。現実という死に物語は負けないし、力と正しさは違うし、愛される事より愛して救う事を欲してこそ愛が得られたと思うし、正しさとは間違う事を恐れ続け考え続け間違っても考え直す事故に真っ直ぐすぎる危うさにも数の力にも独善にも我欲にも負けちゃダメだし、例え世界が敵に回り救いが見えなくてもそれは捨てない! この言葉の果てに一つの救いがあると叫ぶ!」
これまでの全ての
「そんなもの、貴様等だけの……!!」
「少なくともゼロではない! それにこれで全てでもない! そして少しの力でも……頑張れるとその少しの皆に示せる! 皆が頑張ればこれ程までになったぞ!」
ZDDDDDGAMGAMGAM!!
アッパーカットを食らいながらも尚食らいつかんとする『
この力は先にも言ったとおりあくまで皆から貰ったもの、その集大成だ。つまり、もう既に、私達は二人ぼっちなんかじゃない。そして、物語の書き手が一人でも読者がいれば一つの世界を認識し一つの冒険を観測し綴る程の力を発揮できるように、私達は一つの思いごとに一つの世界程の力を出す、と。
「これは誰もが通せる訳じゃないのは百も承知だけど、そんな僕達を見てくれた人の何人かは、同じように一つの世界程の力を出し、それは私達を相互に更に勇気づけあい、力づけあい、繋がれる、一つにはなれずとも一連の流れになる事くらいは! 一つ一つの命の限界を越えて、人の心の動きとして、それぞれの物語が残る限り、いや、自分の物語の形が無くなっても、影響の影響という形で別の物語に影響を与えていく! 全然別の物語とも響き合い伝わっていく! 例え地球が滅んでも、僕達が
それでも尚その頑健重厚な体に損傷を見せぬ『
「だから『
血を吐き問うリアラに、『
「丁度良く救済を待っている都合の良い世界がそうそうあると思うかい!? そういう世界をいちいち作る、つまり最初から絶望させる為に世界を作った事もないでもないよ? はは、それはそれで罪深いさ、どこかで危機に陥り救われたがっている誰かを欲するという事自体もだけど! それくらいなら過程をすっ飛ばしてもいいし、それに何より、異世界転生そのものが願望即ち欲望から生まれた、欲望は原理の根本だ……それに、何より」
だが苦笑が牙に変わる。露に剥かれるその牙は『
「それこそが地球、それこそが人間、それこそが私の救いたいものだからだよ」
……あるいは『
「地球の人間は、邪悪なものも中途半端なものも一杯いる。私は、そいつらを等しく愛している。善は誰にだって愛される。邪悪なものと中途半端なものは、私が愛してやらねば誰が愛してやるんだ。掬い上げる過程で多少擦れあって削れてしまうのは仕方がないが、私は地球人を愛しているんだ。だから」
そして、その愛は逆鱗だった。
「だから地球が、地球人が、他所の清らかな世界に、劣っているなんて許せない。私の愛する地球の人間は、邪悪で中途半端でも清らかな世界より凄いんだって救ってやらなくちゃ、私が、私が地球人を救ってやるんだ! 物語を踏みつけるなと言ったな! よくも言ったな物語! 理想で! 現実を! 踏むなあああああああああっ!!」
『
そしてそれは、地球に物語を踏む事を許すまいとしたリアラ、故郷の世界を踏みにじるものに抗ったルルヤと同じ叫びだった。それは人間存在の根本、自分は自分だ、それを踏み躙っていいものだと勝手に定義するな、バカにするなという尊厳の希求。
((分かった。分かっている。けれど))
リアラとルルヤはそれを理解した。異世界転生を理解した。だがその上で。
「一番弱くて儚い、欲望を持つ事も出来ない奴等も救ってこそ神だろう! 現実を物語が踏んでいるのではない、現実を踏み躙っているのは現実そのものだ!」
「!!?」
救われぬ者を救ってこその神だし、そもそも現実に救いが無いからこそ救いが必要なのではないのか。その言葉で『
本来、異世界転生とはそういうものではなかったか。救われる人が居て、救う人もまた救われて。何時から、救われる者は救う者の為に存在する引き立て役に、救う者は己のエゴを世界に押し付ける事をご都合主義で許された愚者だと揶揄されるまでに成り下がった? 一つ一つの過程に、そんな意図は元々無かった筈だった。巨大な流れが、偶然や故意の逆行を混ぜ、更なる勝利を求める貪欲と更なる快楽を求める盲目痴愚が、即ち欲望が段々と個々ではなく全体を濁らせていった。
そう、『
「僕達は小さく儚い、無力で、すぐ消える……巨大な流れの中の小さなものだとしても……それでも、小さくても一つの世界だ。そんな僕達という小さな世界同士が繋がる事が出来る物語は、小さな奇跡だ! だから、僕達の小さな奇跡が、他の世界に影響を与えて、また小さな奇跡を生んで、繋がって、繋がって……!!」
歩未が語った事をリアラはまだ覚えていた。シャーロック・ホームズの例え話。物語が現実に干渉する。世界が物語を作るように。それは入れ子構造の無限、覗き込めば恐ろしいと感じる事もあるが、それは無茶な論理である事を承知で押し通せば無限の実在証明だ。自分の人生の中に夢という別の物語があり、今の人生もまた誰かが見る夢かもしれないように。昨日の記憶と今朝起きた記憶が本当に連続しているかを疑う余地だってあるように私達もまた誰かの読む物語かもしれないが、だからといってそれを恐れるには値しない。私達が物語でも物語が私達に影響を与えるように私達もまたその誰かに繋がっていく。
そこまで極端な事を言わずといい。誰かが物語を書く。それを読んだ誰かが少しでもそれに影響を受けた物語を書く。それは、その物語が続いたという事だ。影響は残る。続いていく。感想を語り合った結果でも、思い付いたまま笑いあった与太話でも、共に遊んだ記憶でも。
どこかの誰かに繋がっていく。誰かの心の中で生きられると。少なくともそう信じられる。この宇宙が滅んでもこの宇宙を読む誰かに伝わる可能性はゼロではない。物語は繋がっていく。だからこそ物語は永遠に近いと……永遠は無いかもしれないとしても夢見る権利はそれでもある。人は己が定めた目的を達すれば死に打ち勝てると叫んだかつてのリアラの言葉を補完する、届く限り全ての人へ向ける、死への勝利に付け加える要素を今ここに語り歌う。
「だからここまで来れた! 色んな皆がいたから! 現実があって、物語があって、だから現実を生きる命が心を保って生きられるように! ……異世界転生チートじゃなくても、地球の人の魂は救える。あらゆる物語に、人の魂を救う力はある。だから僕は貴方と戦う。貴方に勝つ。貴方を止める為に!」
「止める為に、だと……この、私を……!?」
様々な物語同士の対等な繋がりの肯定。欲望ではなく人の心の為にある物語。人の心を支える物語が、現実に虐げられ否定され破壊される事の無い世界。それこそが死への勝利に付け加える未来への歌であり、そして、それが異世界転生という救済に抗う形である以上……それは『
「
ルルヤが言葉を繋げる。吹き飛ばされた間合いをはかり、最後の一撃の為に構えた剣に魔法力をリアラと共に注ぎながら。
「諦めて、妥協して、見捨てて、自分が理想を裏切ってしまった事に罪悪感を感じている時だろうさ」
「~~~~~~~~~っ!!」
猛り狂う復讐者であったルルヤは、その復讐の旅の終わりに、全ての元凶にただ静かにそう告げた。そして、静かな言葉だからこそ、それは芯を突いた。
心が傷つくのは心があるから。お前も、お前達もまた、物語に救いを求める心傷ついた者、本来物語に救われるべき私達と同じ存在だった。唯、本の少し知恵と力の使い方が私達と違っていただけだったのだ、と。『
「尤も、剣を捨てる訳にもいかない。私達もまた、ひとつの救いの形でしかないし、私達が切ってきたのとは違う敵もいる。多様性を盾に人の独立を侵す悪を為す奴もいるし、理想を悪に用いる奴もいる。不完全だ。だが」
それでも、戦わない訳にはいかない。何故ならば。
「それが僕達と、『
リアラも共に剣を構える。地球と現実の化身でありながら同時に異世界転生という物語の化身でもある、優劣上下が物語と物語を綴り読む者の心すら知らず知らずに蝕む物語たる『
「だから、僕達は」「私達は」「……逆襲する」
最後の魔法を織り上げる。世界の狭間で、だからこそ出来る、今この時限りの魔法を。それでもここまで戦ったからこそ出来る奇跡を。
「終わらぬさ、終わらぬよ、欲はまだまだそれでも尚燃え続ける。それでもか」
「「それでも。命が作る物語は、続けながら変わる事も出来るし、一旦終わってもまた新しく始められると、信じる。その未来を、貴方から取り戻す」」
尚否定する『
『
「『
リアラとルルヤもまた剣を構え、諸世界と繋がった。そこには様々な世界があった。物語の中の世界。その物語を観測する。別の物語の世界。物語を観測せず只管現実的だが他の世界に物語として観測されている世界。
そこには多くの悲しみがあった。己が属する世界に圧殺されていく、小さな世界としての人々の魂。そして、滅んだ世界達の魂。
それら様々な世界の既に滅んだ魂の無念を【
響き合い、甦る活力からも、力を得る。力を齎す。救いを齎す。この一太刀で!
「【
剣が光と闇が入り交じり無限色数の輝きを帯びて天地を繋げる如く伸びる!
その剣を掲げるように握り、振るう。身に余る力を、世界達を思う心で担う。
翼を羽ばたかせ、相手の突撃に合わせる。切りかかる太刀筋に呼応する。世界と想いをぶつけあう一合なれど、あくまでリアラとルルヤ二人刻みあった武に沿って。踏み込み、剣と剣の激突、『
二人の物語を束ねた一撃が激突する! そして……!
何処とも知らぬ場所。
いや、その風景を、
過去か、未来か。それすらも分からない。ここが実在の場所なのかも、ある種の心象風景めいた異空間なのかも。
そこは河原だ。ごくありふれた地球の河原。……地球で
その川の水に半身を浸かりながら川岸に流れ着いている自分に、リアラ・ソアフシュム・パロンに転生した筈の少年、
【融合巨躯】の解除されたルルヤが倒れていた。それを同じく
『
倒れたルルヤに振り下ろそうとしていた己の手の内の光の刃は、最後の誘惑をはねのけた少年の、唯の路傍の石に及ばない。届かない。間に合わない。奇跡の力が。何たる皮肉。
『
『
仲間を守る為だったら、人は私が思う程どうしようもないものではなくその清らかさを保っていたのだろう。己の腹を満たす為や奪う為だったら、人は、ほんの少しは成長したのだろう。
何れにせよ、ありのままの人の悪性を肯定しようとした己への、確かな抵抗であったと、『
それは幻だったのか、共有した心象風景だったのか、周囲の事象が書き変わった結果だったのか。何れにせよ、それは一瞬。
剣と剣、最後の想いと想いの激突が互いを打ち砕きあった。
『
「そうか……すまなかった……」
『
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