《俺のグルメFESTIVAL》
『幸せを食べる。』
手の平に馴染む重み。僅かな力でじわりと指が沈む。
香料では再現できぬ香りがふわり。甘く儚く、どこか青い。鼻腔をくすぐり、うっとりと幸せな気分を呼ぶ。
ああ、桃。この幸せを、恵みをぎゅっと固めた果実。
ベルベットのように心地よい、象牙色の肌は鮮やかな紅を滲ませる。薄い皮はつるりと剥けた。潰さぬよう捧げ持つ手に、それでも溢れた果汁が滴る。柔い果肉に刃を入れて、そっと種から剥がす。めりっと音をたて外れた一片を、口へ。
唇で潰れる柔い果肉。じゅわりと甘い果汁が溢れ、取り零さぬよう指先ごとすする。
舌が甘いと謳う。鼻腔に香りが溢れる。咥内に満ちる恵みを喉を鳴らして飲み下せば、うっとりと頬が緩んだ。
幸せを、食べる。
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