『応援』(お題:声)


 勇壮な応援歌が響く。

 固唾を飲んで見守る。

 拳を握りしめる。

 危機回避。

 ガッツポーズと共に声が漏れる。


 次はこちらの攻撃。

 チャンス。

 前のめり。

 っしゃァ、行けェ!

 思わず叫ぶ。


 誰が居るでもない液晶画面の前。

 どこへ届くでもない、声。


 自分にしか響かない応援。


 落胆の溜息、口をついた悪態、激励、歓声。

 脈打つ鼓動が胸を押し上げ、声になって迸る。

 身体を内側から殴りつけていた想いが解き放たれ、空へ掻き消える。


 胸を抜ける爽快感。

 ああ、声に出すのって気持ち良い。

 感じるだけじゃダメだ、発散しないと。

 本当は、誰かと分かち合えればもっと良い。


 喜びも、危機感も、悔しさも。

 いつか満員のスタジアムで。


 そんな夢想をしてもチケットは遠い。



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