『導く光』(お題:光)




 天も地も茫洋と霞む、薄闇の中に立っていた。


 ここに居るのは私だけで、だけど私以外の多くのモノが居た。

 時は永遠で止まったまま。喜びはとうの昔に忘れ、もう哀しみも擦り切れた。


 そんな折、貴方がやって来た。

 貴方の背後から光が差す。光は靄を払い、貴方の足元に影を落とす。

 落ちた影は貴方の確かな「存在」を知らせ、ここに、光に映るモノは他に何もない事を知らせた。

 光が私に喜びを与え、だけど光が私を哀しみに突き落とす。


 貴方は言った。


「光は闇を払うのではなく、世界に影を刻んでその姿を明かすもの。思い出して、貴女は――」


 ええ、思い出した。

 私はもう、死んでいるのね。


 還らなければ、周囲に蠢くモノたちと共に、「あちら側」へ。


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