第21話:二人の在り方
「ん……」
暗闇の中目を覚ます。随分長いこと寝ていたようだ。
「おはよう、朝霧」
「……槇?」
「うん」
「ずっと座ってたの?」
「うん」
「……馬鹿なの? 寝なさいよ」
「朝霧が心配で」
「……そう」
朝霧の不機嫌そうな顔。暗くて見えないけれど、槇の目には浮かんだ。
「槇?」
「ん?」
「……こうやって優しくされるの、嫌いなの」
「ひどいなぁ」
槇の苦笑。見えないけれど、朝霧の目には浮かんだ。
「……私は、一人で良かったの。一人で、死んでいく。それで、良いのよ」
「うん。知ってるよ」
「死ぬのが悲しくなりそうで、誰かを置いていくのが、辛くなりそうで」
「うん」
槇は知っていた、というように、穏やかで短い返事を繰り返した。
朝霧の眼から涙が零れた。それは槇には見えてはいなかったけれど。
「優しくされると、
「うん」
それは、朝霧が初めて零した弱音で、本音だったのだが、槇はやはり知っていたことのように答えた。
「だから、あんたなんか、嫌いよ。槇」
「うん。わかってる」
槇は優しくそう言って、朝霧を撫でた。
「嫌いなままでいいんだ。好かれたくて、君の傍にいるわけじゃない。そのことを
朝霧はゆっくりと目を閉じて、深く息を吸った。
「そう……」
そして安心したようにゆっくりとまた、深い眠りについたのだった。
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