第6話:雨と変異
二日後、意を決した間宮は、告白してきた男子を屋上に呼び出した。
一人、彼を待っている間、間宮はドキドキする心臓を押さえつけ、目をつむっていた。随分長いこと、そうしていたように思う。
「――や……、間宮!?」
名前を呼ばれて間宮ははっと顔を上げた。
「おい! 大丈夫か、間宮!」
「え?」
目の前にいる男子はすごく心配そうな顔で間宮の肩を掴んでいた。
「なんでそんな恰好で待ってるんだよ!」
「そんな恰好……?」
そう言われて、再びはっとした。いつの間にか髪の毛や服がびしょびしょになっていたのだ。肩を掴む彼の体も少し濡れている。ふっと空を見上げると、ゲリラ豪雨を思わせるような雨が二人を打ち付けていた。
「え……いつから、雨なんか……?」
現状が把握できない。
「とにかく中に入るぞ、寝てたのか!?」
彼は間宮の手を取り、校内へと走った。間宮はもつれる足で、なんとか彼について行った。
校舎内に入ると、彼は鞄からタオルを出して渡してくれた。
「寒いだろ」
「ありがとう」
間宮はタオルを受け取って髪についた水滴を拭いた。
だけど変だった。全然寒くなどなかった。それだけじゃない。あんなに強く地面を打ち付けていた雨が、体にあたっている感覚がなかったのだ。
「あの……黒田」
「わかってるよ」
黒田は微笑んだ。
「俺とは付き合えないんだろ?」
「……うん。ごめん。……ごめん」
間宮は泣きそうになってしまったが、泣きたいのは相手の方だと思い直して、ぐっとこらえた。
黒田はそんな間宮を見て困った顔をしたが、笑ったまま、「気にするな」と言い去って行った。そんな彼の背中を見て、我ながらいい男を振ってしまった、と間宮はぼんやり思った。
けれどそのことよりも、自分の体の異変に間宮はじわりと嫌な恐怖を感じていた。
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