ホラー・サスペンス系
不幸な王子
女は「王子」と呼ばれるミュージシャンのファンだった。女の部屋は王子関連のグッズなどで溢れかえっていた。ファンレターも沢山送った。王子を追っかけて毎年ツアーなどで王子が行くところ全てを巡った。
「王子……ああ、私の王子様……あなたへの想いで私の胸は焼き尽くされそう……」
女はいつか王子と一緒になりたいと恋焦がれていた。
一人娘の女はとても可愛がられて育てられた。母親は無く、父親は男手ひとつで大切に
王子を追っかけることを父親は応援した。王子ならば
女が王子に掛ける費用は多額に上った。女は追っかけの為に仕事もままならなく、父親が費用の工面をした。
王子は住む場所を定期的に変えており、その度に父娘は王子の住居を探さなくてはならない。それに伴う費用も掛かる。
とうとう父親の資金は尽きて、多額の借金をした。それも払えなくなると家を売り払った。さらに父親は自分の臓器を売ることにした。
王子は盗聴器や隠しカメラを探知機で定期的に撤去しており、その度に父娘は新しい盗聴器や隠しカメラを用意しなくてはならない。それに伴う費用も嵩んだ。
父親はもう売れる物は何でも売った。全て
その後、父娘はアパートで暮らした。ある日、隣部屋の住民が火の不始末を起こしアパートは全焼した。当時、女は出掛けており、一人でいた父親は逃げ遅れて焼死した。
父親を失って女は初めて父親の愛に気が付いた。自分が父親からどれだけのものを受け取っていたか――。
女は悲嘆に暮れ、王子の追っかけを止めることにした。
王子、もう引っ越しをする必要も無いわ……。
王子が私をここまで追い詰めたのよ……。
……王子はパパを殺したも同然よ!
女は全てを焼き尽くす思いで、王子のもとへと向かった。
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