堕ちたロボットスター

 ステージの上で華麗なダンスを披露するそのロボットは世間から注目された。

 外見も動作も人間のようで、しかもイケメンなロボット「6Dロックディー」は瞬く間にお茶の間の人気を博し、ロボットスターとなった。


 しかし、小惑星の欠片が衝突して一部地域が被害にあった際、救援活動を期待された6Dロックディーは「役立たず」と罵られて、その存在を徐々に忘れ去られていった。

 6Dロックディーは荒れ果てた地面では歩くこともままならず、重い瓦礫や岩を運ぶ事なども一切出来なかったからだ。


 数年後、また小惑星の欠片が衝突した。

 瓦礫や岩によって孤立した地域にいち早く救援に辿り着いたのが、改良された6Dロックディーだった。

 荒れ果てた地面を駆け抜けて、6Dロックディーは不安な思いをしていた住民達の前に現れた。

 現れたのが、数年前に全くの役立たずだったロボットだと知った時、住民達はがっかりした。だが、「荒れた路面を通ってこんなにも早くここまで来れたんだ」「大分改良が加えられているんじゃないか」と、住民達は今度こそ6Dロックディーが活躍してくれることを期待した。


「よし、岩を持ったぞ!」


住民達が見守る中、6Dロックディーは道路を寸断している岩の一つを持ち上げた。

 住民達にとって、早急に道路が通じて救援ルートが確保される事は今後の復旧活動にとって大変重要なことである。

 

 6Dロックディーは岩を持ったままお得意のダンスを披露する。


「岩を持って踊ってるぞ!」

「やっぱり役立たずか!」


 住民達の期待は落胆に変わろうとした――


「いや、岩を置いたぞ!」

「エンターテイメント性を兼ね備えた復旧活動をするんじゃないのか!?」


 6Dロックディーは踊り続けながら横にどかした岩を再び持ち上げる。


「どかした岩をまた持った!?」

「そして元の位置に置いた!」


 6Dロックディーは今度は大きな瓦礫を持ち上げる。


「そうか! さきにあの大きなやつをどかすんだ!」


 6Dロックディーは踊り続けながら大きな瓦礫を横にどかす。


「で……またその瓦礫を持つ~!?」

「そして、元の場所に戻した~!」


 6Dロックディーは踊りながらもまた別の岩を持とうと――


「持たな~い!」

「持とうとして持たな~い!」


 6Dロックディーはそのまま住民達の方に歩み寄り、新機能のラップを披露した。


「荒れ果てた広野、駆け抜けるそうさ俺は6Dロックディー! どうだ俺のバイブス、岩もどかす! 空に輝く星のように、俺は輝くロボットスター!」


 ――6Dロックディーは住民達によって解体された。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る