2ページ

「そっかぁ、男の人って案外若い子が好きな人ばっかじゃないのね」

 もちろん若い子も好きだけどね。

「そうなの?」

「でも、年上の女性の余裕とか色気とか、そう言ったものは若い子にはありませんから」

「でも若い子の方が、守ってあげたくなるんじゃない?」

「うーん、それもそうなんですけど。それだけじゃないんです」

「違うの?」

 当たり前だ、年下の若い子と年上の女性とでは全然違う。

「年上の女って、気が強くない?」

「そこが良いのではないですか」

「そこが?」

「そんな強くて余裕のある女性がふと見せる弱い部分に、自分が守ってあげなくちゃとなるんじゃないですか。頼られたいと、傍に居たいと思うのですよ」

 うーん、と首を傾げる松本さん。でもその顔は先ほどまでとは全然違う。どこか嬉しそうだ。

「その男性とはもうお付き合いされているんですか?」

「え、ないないないない! だって私より十歳も下なんだよ? そんな、付き合えないって」

 ブンブン、と首を振る松本さんは「おかわり」とカップを差し出す。

「でも」

「でも?」

「実はちょっと、良いなって思ってきてるんだよねぇ」

 カウンターに突っ伏した見えないその表情は、きっと微笑ましいものなんだろうなと思う。

「マスター、また訊いてくれる?」

「もちろんですとも。私は美味しいお酒と、お話を聞くことだけは得意なんです」

 どんな告白でも、聞かせてください。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る