ネイビーブルーのTシャツ

カゲトモ

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 懺悔室、と言うものが教会にはあって。

そこは小さな部屋で薄い壁一枚を隔てた向こうの神父様に、自分の罪を告白し御赦しを頂く部屋だ。懺悔室の中は、誰が懺悔しに来たのか分からないように出来ているのだが、実のところ神父様には大体分かるものらしい。いつも礼拝に来ている信者なのだから、声や話し方で分かるのだと言っていた。

もちろん、このことは秘密だと神父様には言われていたけれど。

「実は・・・」

 それは専用の部屋が無くても、神父様でなくても告白を受けることだけは出来るわけで。

「マスターに聞いて欲しい話があって」

 そう深刻な声で言い出したのは、いつもおしゃれな恰好をしているファッション雑誌編集者の松本さんだ。

 彼女は少し低い背をコンプレックスなのだと言いながらも、それを生かす恰好を探すのが楽しいのだと言っていた。カラッと笑う笑顔が素敵な、さっぱりとした性格の女性だ。

「どうされました?」

 スパイスを利かせたホットワインを半分くらい開けた松本さんが、こそっと小さな声で言った。

「実は年下の男の子に、告白されて」

「おや、そうでしたか。それはそれは」

「いや、別におめでたいことじゃないんだけどね」

 歯切れの悪い言葉と、この微妙な表情。どうした何があった? たしか独身だったと思うけど・・・?

 不思議そうな顔をしていたからだろうか、松本さんは視線を逸らして言った。

「マスターってさ、年上の女って、どう思う?」

「え? 年上の女性、ですか?」

 うん、と頷く松本さんは確かに俺よりは年上で、確かな年齢は訊いていないが多分三十代半ばだと思う。

「それはどういった事についてでしょう?」

「その、恋愛対象的に」

「恋愛対象ですか」

「うん。あり? なし?」

「ありですね」

「あり、なんだ」

「あり、ですね」

 俺の即答に、なぜか納得しない表情で松本さんはまたカップを傾ける。

「ありっていくつまで?」

「えぇと、そうですね。あんまり考えたことないので良く分からないのですけど、良いなと思えばいくつでも」

 あれ?

 さらっと答えたはずなのに、松本さんはじぃっと俺の顔を見ると、軽いため息を吐いてカップを煽る。下ろしたカップの底は、もう見えていた。

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