往々にして可笑しなものではあるけれど
imi
第1話
自分は見知らぬ和風の一軒家に居て、でも何故か、たしかにそこに自分は現在進行形で住んでいるという確信だけはあって、五メートルほどの廊下を歩いていた。
ふとどこからかカリカリと引っ掻くような音がして、耳をすますと、T字になった廊下の角から音がしているのが分かった。
なんだろう?
そう思いながら手を伸ばすと、突然、角から細い腕に腕を掴まれた。
驚いて自分の腕を引くと、腕を掴んだ細腕も一緒に付いてくる。
その細腕は肘から先しかなかった。
なんなんだよ、この腕はよおぉぉ!とかなんか色々叫びながら自分の腕を振って細腕を払うと、思いのほか容易く外れ、自分は一目散にその場をあとにした。
どこをどう曲がったとかそういうことは全く覚えていなくて、気付くと、自分はただただ和室の隅で膝を抱えて体育座りで怯え震えていた。
果たして、あの得体の知れないモノにドアの鍵は有効なのか。排除可能なのか。それしか考えられないでいた。
現在地を隠すつもりがないように、ギシッギシッと床が軋む音が聞こえてきた。
その音はドアの前まで来ると、ピタっと止まった。
もうここまで正確に居場所を突き止められると、頭の中は現実から逃避したことを考えることしかできなかった。
頭の中は、スケィスでも、却本作りでも、ソフト&ウェットでも、携帯する他人の運命でも、なんでもいいから能力寄越せやコラァな感じだった。
体育座りで頭を抱えて震えていても、何かが部屋に這入ってきたことだけは確認できるようにしていた。
その目が見たのは五体満足だった。
まずは足。次に、自分の腕を掴んでいた細腕。最後に体、顔の順に這入ってきた。
幽霊のようにドアを開けることなく這入ってきた。
なんというか、夢の中だったのに、その幽霊の立ち姿はよく覚えている。
その幽霊の顔や体を例えるなら、デレマスの鷺沢文香の後ろ髪を長くしたような、アズールレーンのイラストリアスを黒髪にして髪留めを解いたような見た目だった。
幽霊とはいえ、そんな女性が白の縦セタに黒のスカートの姿で立っていた。
そんな女性の姿を見たらもう震えなんてなく、正座で姿勢を正すことが正しいように思え、目の前に立つ女性を前に座り直して自分は頭を下げた。
「大きくてとても素晴らしいおっぱいに一目惚れです!どうか、この家に一緒に住んでください!!」
「…………えっ……!? ……あー……、そんなこと言われたのは初めてです……」
そんな感想を頂いたところで目が覚めた。
往々にして可笑しなものではあるけれど imi @imi_06
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