凍傷
霜焼けというものはとても厄介で、痛いと痒いが同時に神経を蝕んでくる。そんな懸命に働かなくてもいいだろうよと思う程に、二つの感覚が私の身体の末端を狂わせる。
冷え性なのだと、幼い頃に親に言われた。生まれつきの事なのか、何か栄養が足りないのか、そこらの知識に関しては些かなものしか持ち合わせておらず、自分の体がどうしてもこうも冷たいのか、私は長年不思議でならない。
霜焼けは、そんな冷え性という私の体質が引き起こす一種の外傷だ。霜焼け言うなれど、そいつは軽度の凍傷であって、放っておけば大事になりかねない面倒なものなのである。
そんな訳でして、私は冬場はこうして厚手の手袋を常日頃から着用しておるのです。あの二つの感覚が蝕んでくるのが恐ろしくて恐ろしくて、そうなるくらいなら物は摘めませんがこの様な手袋を付けることくらい、なんてことありません。
そんな強りがりを言ったところで、本心に嘘をつくことは出来ません。人間口では何とでも言えるものです。ですが、心の奥底には嘘はつけません。
私は手を繋ぎたいのです。
私だって年頃です。意中の相手と手を繋ぎ、街を歩くなんて事を夢見ることだってあります。しかし、私の手では相手方の手を握ることなんて到底出来やしません。なんせ、こんなにも冷たいのですから。握った手が死んだ者の様に冷たければ、相手も嫌でしょう。そうなることが怖いのです。
その上、私は少しでも冬の外気に肌を晒したならば、忽ち霜焼けになりかねません。あれだけは勘弁です。次の春が来るまで、毎日狂わせられるのはたまったものではありません。
何故なのでしょう。何故私の手はこんなにも冷え切っているのでしょう。心でしょうか。私の心が冷たいから、手先指先まで冷えてしまったのでしょうか。
でしたら、私の心を、体を温めてくれる人が現れれば、私は変わるのでしょうか。
霜焼けとも縁を切ることが出来るのでしょうか。
まあ、そんな人が居るならば、私はこんなことを考えずに済んだのかも知れませんね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます