故郷

 新幹線と私鉄を乗り継いで四時間。俺は久々に、生まれ育った町に帰ってきた。東京での仕事も落ち着き、帰省の余裕と、心の余裕が出来たということで、家族の顔でも見ようというわけである。


 俺だけが下車した駅を出ると、そこは俺の知る町ではなかった。駅前のローターリーにあったはずのプラモデル屋は取り壊され、コインパーキングになっていた。その隣にあった喫茶店も、シャッターが降りている。


 俺は商店街を通り家に向かおうとしたのだが、情けないことに道に迷ってしまった。いつも目印にしている歯医者はコンビニに変わり、俺の知らない道が出来ていたのである。


「降りる駅間違えたのかな・・・」


 俺が過ごした故郷は、俺のいない間に知らない町になっていた。


 

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