裸婦

 街が混沌とする時間、一人の女は男に声を掛けた。


「私凄く寒いの。どうか貴方で私を温めてください」


 鼻の下を伸ばした男は二つ返事で快諾すると、女を連れて路地の裏へと移動する。


 仄暗い照明が照らす部屋に着いた二人。女は躊躇無く、今着ていたものを全て脱ぐ。息を荒らげた男も、無我夢中でネクタイを緩める。


 一糸纏わぬ、絹の様な肌の女は振り向きこう言った。


「今夜はとってもいい日だわ。だって、貴方が私を温めてくれるんだもの」


 恍惚とした表情で、出刃包丁を握る女は男に倒れ込む。


「温かい──」


 男の身体は程なくして冷たくなった。

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